ミッション・エコノミー

ミッション・エコノミー読了。かなり考えさせられた本だった。

「はじめに」で「「外注」と「民営化」がすべておをダメにした」という主張がなされている。「政府の力をバカにして民営化を推し進めてきたために、政府機能の多くが民間に委託され、間違った効率性が導入された。政府にできることはほとんどなくなり、人工知能やスマートシティといった現実味のないテクノロジーに飛びついてしまうありさまだ。」と書かれている。ここでの政府は官僚機構を意味すると考えて良いだろう。日本で言えば、官僚機構をバカにするというのはまず大蔵省をバカにすることに近い。財務真理教などとレッテルを貼って、バカにすることによって官僚機構を弱体化し、国家の財源をかすめ取ることで儲けを得るハイエナ(補助金ビジネス民間企業)を跋扈させる。官僚機構が無謬なわけはないが、行政は法と事実に基づいた運営しかできないように設計されているので、立法府が暴走を止められるようになっている。

本書ではアポロ計画が礼賛されている。4章「いま、アポロ計画こそが「最高の教訓」である」では博打があたって、多くの波及効果を生んだと書かれている。

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※画像の原典は20 Inventions We Wouldn't Have Without Space Travel May 20, 2016と思われる。

その主張は事実だろう。官僚あるいは選良の能力をうまく引き出せることができた成功例と言えるかも知れない。

ついで5章ではDARPAの話が出てくる。私にとっては、RFCこそがオープン化の起源でISOを打ち負かした事例で、官僚機構をバカにした事例だと思う。それも事実だが、この歳になって振り返って見ると、DARPAの成功は官僚の力だった。官僚機構にも謙虚に自分たちの限界を知っている人はいて、官僚外の力を活かす必要性を感じている人はいたということで、さらに内閣にそういった官僚の活動を容認する度量があったということだ。多分、現実には度量と言うより、追い詰められて博打に出ただけだったのだろうが、その博打はあたった。しかもアポロとインターネットの2つで当たった。超幸運と言えよう。

本書、ミッション・エコノミーは、その偶然の当たりをシステマティックに再現できるという主張を書いたものと言って良いだろう。イーロン・マスクやかつてのラリー・エリソンのようなハイエナを跋扈させてはだめだという主張には共感するし、SDGsへの注目も良いと思う。しかし、私はまだ弱いと思った。

マリアナ女史の処方箋に従うのは良いだろう。しかし、私はそれと同時に、それより重要視すべきは自分たちが生きている価値を老若男女が考えること、あるいは教育制度のリベラル化にあるのではないかと思っている。

 

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