LeesmanのThe value of varietyというレポートが発行されWebinarも実施された。ちょうど、SofiaでCoworking Europeが開催されていた最中のことである。最初はこの表題がピンとこなかったのだが、サブタイトルには、Understanding the impact of different seating strategiesと書かれている。それでもまだはっきりしないが、ABWを実施するためのワークセッティング、執務環境を適切に準備することで従業員体験が大きく左右されるという話だった。
レポートはエントリーすればダウンロードできるのでぜひ目を通していただきたい。
P5の表には大きなインパクトがある。調査数のべ120万人で2014年はオフィスの固定席が87%だったのが2022年に49%と半数を割り、2023年は40%まで低下している。つまり、もう固定席は普通ではないのである。グラフを見るとずっと着実に低下し続けているので、恐らくまだまだ下がるだろう。
冒頭の画像は、LeesmanのThe value of varietyというレポートのページから引用させていただいたもので、固定席と非固定席で単純に比較すると固定席のほうが若干Lmiが高い(高いほうが良い)。しかし、非固定席で多様な環境が提供されているケースはLmiはだいぶん高いのである。改めて想像してみれば、非固定席で集中スペースや、雑談スペース(大昔で言えばタバコ場や給湯室の進化系)、カフェスペース、大小会議室や応接室などが揃っていれば、固定席が割り当てられている人であっても、自席以外にいる時間は長くなるだろう。
Leesmanはもともとオフィス戦略立案のための情報を提供する会社なので、顧客に大企業が多く、総席数が多ければgood varietyを実現することができる。レポートに含まれている2つの事例を見ていると、こんなオフィスだったら通勤で時間を取られても在宅より気分良く働けるかもと感じさせられる。
一方でもし会社の規模が30人だったら、poor varietyにしかなりようがない。しかし、Design Officesのようなサービスドオフィス事業者はその需要をみたすことができる。Coworking Europeの開催中にセッションや個別に聞いた話では、ABWを意識したシェアオフィス/コワーキングスペースでは、プライベートオフィスの需要は堅調だが、大部屋ではないと言う。30人の会社だったら、バックオフィスは固定席で4名のプライベートオフィス、チーム用の5〜6名用プライベートオフィスが2〜3ある方が良い。固定席の総数は5割またはそれを下回る数にして、30名分で契約して、Sharedな集中スペース、雑談スペース、カフェスペース、大小会議室や応接室を利用するほうが、ずっと快適になるのは容易に想像できる。残念ながら、私の知る限りではそういう事業者は日本ではまだ現れていないが、欧州ではそのようなマーケットが立ち上がり始めて熾烈な競争が始まっている。時代は転換期を迎えていると思う。
もちろん、コワーキングスペースの視点で見れば、地域活性化などを目指すものは世界中に点在しているし、オペレータの魅力で繁盛しているスペースも少なくない。しかし、働き方の未来という視点で見ると、一度は敗退したとは言え、WeWork登場前後で時代は変わったのである。フロンティアは一度は倒れたが、その可能性は後続事業者のやる気を引き出すとともにユーザー側の意識も変えた。
ABWをもう一度真剣に考え直す時期に来たとも取れると思う。
※冒頭の画像は、LeesmanのThe value of varietyというレポートのページから引用させていただいたもの