2021年9月28日にLeesmanのData Debriefsを聴講した。今回は、新サービスの準備に向けてデータ分析をした紹介である。
既に、動画が公開されている。いつもながら非常に興味深い内容である。
Leesman社は
Delivering insights that drive better workplace strategies
をミッションとしている会社で、ワークプレース戦略を立案するための情報提供を行っている会社だ。同社の社員アセスメントサービスを利用する企業から調査費をもらうことで成り立っている。同社は21のアクティビティを定義(ABW概要参照)して、オフィスや部署単位で従業員の経験(概ね満足度に近い)を聞き、それと設備の状況やアメニティ等のサービスがどう影響するかなどを分析する。膨大なアセスメントデータを統計分析してベンチマーキングを行うことで、たしかにDelivering insights that drive better workplace strategiesに貢献している(同社の資料でABWとの関連は詳しく説明されている。)。もともとはオフィスに焦点を当てていたが、在宅勤務での経験を分析するなど、幅を広げており、今後ハイブリッド(オフィス+在宅+アルファ)時代のワークプレース戦略に資するサービスを出していく方針である。
コロナ禍で強制的に在宅勤務が進んだが、Leesmanの顧客企業の従業員のアンケート(スライドタイトル:How many days per week would you like to work in your main workplace post Covid-19?)では、コロナ後の勤務形態として、週に出社を1日以下としたいと考えている割合が37%、2~3日が47%、4日以上が16%となっている。単純計算だと100%*16%+50%*47%+20%*37%=46.9%なので、オフィスの稼働率は5割を切る計算になる。さらに自社オフィスでなく3rd spaceを使うケースもあるので、席数ベースで考えるとオフィスは半減して良いことになる。
上記のアンケートに基づいて、回答者の属性を、オフィス依存型、オフィス依存寄りハイブリッド、ハイブリッド、在宅依存寄りハイブリッド、在宅依存型に5分類すると、最多グループはハイブリッド、2番目は在宅依存型となる。Leesmanの観点だと、このハイブリッド属性を有する人達にどのようなワークプレースを提供するのが望ましいのかが問題となる。
この属性で、オフィス依存型と在宅依存型それぞれの人々にとって、重視しているアクティビティが意外と違わないという結果(スライドタイトル:Top 5 important activities)は興味深い。最重要アクティビティは「デスクで個人的に行う集中作業」で2番目は「予定された会議」で一致している。3番目以降は食い違っているが、オフィスの価値を考えると、オフィス依存型の重視アクティビティの「共同で行う集中作業」、「非公式な予定外の会議」、「他者からの学習」が大事となる。まあ、予想通りの結果なのだが、ICTツールや適切な3rd spaceがあれば「共同で行う集中作業」はオフィスである必要はない。「非公式な予定外の会議」のために望まない人の出社を強要するの現実的ではないから、これはICTツールに頼らざるを得ないだろう。最後に残るのは恐らく重要度5位の「他者からの学習」だろう。
LeesmanはオフィスのFlexible solutionsを検討している。プレゼンテーションでも明確にされているが、ここで言うFlexible solutionsは3rd spaceのFlexible Officeのことではなく日本で言うフリーアクセスオフィスのことだ。フリーアクセスは有効なのはほぼ統計的に証明されているが、バリエーションが豊富なフリーアクセスと一様なフリーアクセスでは明らかに効果が違うとしている。バリエーションが豊富なフリーアクセスは、静粛スペースやカジュアルなスペースなどABW的に見て今やろうとしているアクティビティを実施するのに効果的なスペースが提供されていると考えればよいだろう。これはサードワークプレースでも同じことが言えるだろう。コワーキングスペースであれば、Web会議用のブースや、集中スペースの存在、少しザワザワ感のある空間、ちょっとした会話ができる場所などが適切に準備されているか否かという話になる。
※画像は同社のワークプレースの価値を論じた資料のダウンロードページのもの(無料)。全体的な説明のページからたどることができる。