そのエリアでワーケーションが成立する規模を考える

hagi に投稿

昨今、いくつもの地方自治体がワーケーションに取り組んでいる。この記事を執筆している段階では、wikipediaでは英語のworkationの項目がないので、世界で通用する言葉ではないと考えて良い。ただ、アメリカにworkationing.comというWebサイトがあって、そのサイトにworkationing-vs-digital-nomadという記事がある。そこで、以下のように定義されている。

Workation, (noun) – a working vacation, where you go to an exotic location and complete specific tasks or accomplish a goal before you leave. In between work sprints, you vacation.

ワーケーション(名) - 働きながらの休暇。日常とは異なる地に行って、その地を離れるまでに特定の仕事を完成させること。頑張って仕事する合間が休暇。

日本語版のWikipediaの「観光地やリゾート地でテレワーク(リモートワーク)を活用しながら、働きながら休暇をとる過ごし方」とは微妙に違う(以下では、日本の定義を日本のワーケーション、workationing.comの定義をWorkationと呼ぶこととする)。件のページでは、条件3として”You must focus on, and stay in one place long enough to accomplish a goal” - 「仕事の成果に焦点を当て、その仕事を完成させるのに十分な時間をその地ですごさなければいけない」としている。つまり、Workationingを提案している方から見ると日本のワーケーションは休暇の合間の執務であって、Workationではない。

私は、この考え方に共感する。日本のワーケーションは、休暇により近くて、仕事に焦点があたっていないように感じられて抵抗感がある。私にとって、ここ数年継続している春のGCUC込みのUSツアー、秋のCoworking Europe込みの欧州ツアーは、Workationである。特に秋のヨーロッパは、基本的にCoworking Europeの街+2カ国を原則としていて、その時期のコワーキングのトレンドをまとめる仕事と、一定の関係性を訪問したコワーキングスペースの運営者と確立することを自分に課している。観光も含めるが、決して観光は主目的ではない。

実はヨーロッパでは、ほぼ必ずストックホルムに寄ることにしている。ホテルもいつくか回った後、原則として同じモーテルを使うようになった。そのモーテルと隣接のパブには、私の顔を覚えている人がいる。ああ今年も来たねという表情を見せる。定期的に情報を交換するあいてもいる(空振りはある)。

Workationが成立するには、仮に2週間以上滞在した時にあまり我慢しないで生活ができるようでなければ困る。日本であれば、コンビニ弁当でも良いが、街に自分が行きたくなるような定食屋、一杯飲み屋が最低5件は必要だと思う。もちろん、ストックホルムはその条件を満たすし、ビリニュスやタリン、アムステルダムやオスロなどの都市は十分に機能する。一方で、日本のワーケーションを標榜しているところでその条件を満たす街は少ない。バケーションなら短期だから、古民家民宿のご飯でも構わないが、長くなればいくつかの飲食店か自前で何とかなる食材が手に入らないと苦しい。

そうやって考えると、Workation人口が1,000人程度は必要だと思う。例えば、私がちょっと良い感じだと思っている静岡市の用宗だと人口が4,000人位(不正確)で、もしWorkation地域として機能するとするとトータル5,000人の地域となり、人口の20%がノマドとなる。飲食店は、Workation人口100人に1軒程度の生存が可能だと思う。100人が平均1日1,000円使うとすると日販10万円なので、地代が安ければ十分成り立つだろう。Workationでの月額付加価値が20万あったとすると、一日6,000円なので旅費を別途すれば、住居とワークプレースで月15万円以内で過ごしたい。Workationの人にとっては、バケーションの豪華さはいらないから、最低限の家具付きアパートが光熱費込みで10万円強で手に入るのが望ましい。多分、用宗であれば、空家等を考慮すれば、実現可能なのではないかと思う。平均1,000人のノマドがお金を落とすようになると、街は変わるだろう。ノマドが行きたくなるような店が10軒となり、稼働率5割で計算すれば2,000床の宿泊施設が生まれることになるだろう。初期投資と集客が乗り越えられれば持続性が生まれる気がする。

1,000人のノマドの内、多分900人はバケーションだ。残り100人の内の90人は1週間以上3ヶ月以内の滞在者だろう。最後の10人は平均滞在年数5年程度の移住者になるだとうと思う。直感的な仮説なので根拠はない。

私は、コワーキングスペースはWorkationには不可欠だと思うし、コワーカーにもかなり趣味の差があるので、200席程度の特徴の異なるスペースが5箇所程度必要になると思う。オープンなスペースもあれば、壁の高い場所も必要となるだろう。ちなみに、ストックホルムでは、今は圧倒的にメンバーオンリーのスペースが主流である。街が軌道に乗るようになると10人の安定したユーザーを意識するスペースは経営が安定し、100人を想定したスペースも900人を想定したスペースもサービスが最適化されていくだろうと思う。つい900人に目が向きそうだが、都市計画視点では多分100人、10人のことを最初から考えておいたほうが良い。

先のことは分からないが、私は、デジタル化とともにユビキタスライフスタイル時代は必ず到来すると考えている。

写真は、ストックホルムのオープ系のコワーキングスペースが変遷をへて喫茶店となったCofficeというお店。