2日目は人数も減り、例年通り前日飲み過ぎという人も時折見かける。出席したセッションの中には印象に残らなかったものもあるので、3つだけ触れる。ちなみに、最後のCoworking Fuck Up Sessionは、円席を構成して、失敗談と得られた知見を短く発表するものでJean-Yves他10人強の人がボランタリーで表出した。青木氏も表明したのは立派。即席発表なので聞き取れないものも多く私の英語力では発表はおろか理解さえ追いつかない時間となった(残念)。
Market Education, Readability and Vocabulary issues ... Coworking/Flex is still unproperly understood, how to fix the situation?
Lizがモデレータを務めるパネル。Coworkingとはなにかというある種根源的なテーマに取り組んだもの。冒頭LizがいきなりFlexという言葉が嫌いだと表明した。CoworkingはCommunityだという考え方に立っている。
今回の登壇者はCommunity(サポート)はoffering(提供サービス)と捉える考え方が主流で、現実的だった。SpaceとPlaceという言葉に言及している人もいたのは興味深かった。Coworking space、Working placeの対比で、Spaceは空っぽの空間を示し、Communityが機能して完成するという感じ。Work placeは、最初から仕事はあるもので、それを実施するための場所を提供できた段階で完結する。この考え方で言えば、Flex officeはWork placeであり、サポートサービスが優れていることが競争力になるが、コミュニティがなくても困らない。パネルの中で出たわけではないが、その考え方を援用するとCoworking spaceはCommunity placeと捉えることもできなくはない。co-workingとcoworkingが今も混在するが、Flex officeはco-workingで、coworkingではないと主張する人は多い。LizはServiced Officeは死語だと主張したが、Flex officeは明らかにServiced Officeと考えて良い。最近ではManagedという言葉を使うケースも増えてきていて、フリーランサー、士業や小規模顧客向けをServiced office、中大規模顧客向けをManagedとする考え方もある。Managedの場合は、日本の総務部門の機能を一部アウトソーシングする形。Servicedの方は共用コピー機とか共用スペースの維持サービス程度というのに対して、Managedは一定の支払い能力がある顧客の要望にあわせてWork placeの改変や拡大、縮退までをサポートする感じ。登壇者各自それぞれの意見を持っていて定義は収束しない。
アセスメントで特徴の見える化をすれば良いという考えに立っていたのが、Sherri Tao, FlexGradeで、運営事業者、所有者・ブローカーが経営判断するための枠組みの定義と評価を行っている。そのブログを読むと、運営事業者(施設を含むサービス提供者)が評価・認定を受け、それでブローカーからの商談を増やすことを意図しているとも取れるし、ブローカーに商談件数を得て手数料収入が得られるからデータを買えというようにも取れる。FlexGradeのLinkedInページによれば、2024年創業の米国ベンチャーで、ロケットスタート状態とは言い難いが、うまく機能すれば、英Leesemanのような存在になれる可能性もあるだろう。
Tailored Managed Offices for Corporates: The Next Big Opportunity for Flex Workspace Operators?
セッション説明にある通りに進んだ。
The session will open with a 15-minute presentation by Knotel, introducing their definition of the “Managed Office” concept and outlining how this model differs from traditional flexible workspace offerings. The presentation will explore why fully serviced, privatized offices are emerging as a key pillar in the future of the flexible workspace industry.
セッションは、Knotelによる15分間のプレゼンテーションで開幕します。同社は「マネージドオフィス」の概念を定義し、このモデルが従来のフレキシブルワークスペース提供とどのように異なるかを概説します。プレゼンテーションでは、フルサービス型のプライベートオフィスが、フレキシブルワークスペース業界の未来における重要な柱として台頭している理由を探ります。
Sam Jenkinsのプレゼンは素晴らしく、Managed serviceとHospitalityの組み合わせへの言及など、大手顧客に焦点を当てた魅力的なサービスの形に言及していた。2枚、特に印象に残ったスライドを貼っておく。
2つのスライドに共通するのは、大家とFlex事業者が共同して、顧客へのサービスを提供する形への変化を提唱している点だ。大型顧客を満足させるためには、空調設備などを含めビル自身の改修が必要なケースもあるから、Flex事業者だけでは充足することができない。言い換えると、上手な協力関係が構築できれば、双方の利益が増大するということになる。整理してしまうと当たり前な感じもするが、現実にどう進めるかという話になると容易ではないだろう。実際、会場からも契約方法についての質問も出ていた(残念ながらやりとりを十分に理解することはできなかった)。
商用不動産マーケットは明らかに時代変化が起きていて、国や地域によって商習慣が違うとは言え、ノウハウをもった事業者が徐々に全世界で活動を開始していくことになるだろう。再興中のWeWorkやNYで散見されるKnotelなどは、伝統のIWGに伍して成長するのではないかと感じさせられた。まあ、もはやCoworking spaceという枠では収まらない。改めて、「Coworking & Flex Workspaces Conference 2025 Berlin」という表題を冠したJean-Yvesの変心を高く評価したい。
The Art and Economical Value of Care - A journey through 100 successful coworking brands across the world
Paulineの今後出版予定の新本Make community work(仮題)の紹介を兼ねた発表で、非常に盛り上がっていた。彼女は日本を含めてとにかくたくさんのコミュニティマネジャーと話していて、例えば、イベントはスペースのためにならないとか、様々な声を直に聞いているので、そこから引き出した知見の表明に説得力がある。今回のセッションは断片的な知見の紹介だったので、委細については触れない。まずは、本が出るのを待ちたい。
後刻のパーティでは、ハンガリーの方を始め、初めてあった人や馴染みの顔との話に終止してしまった。かなり、日本を本気で訪問したいと思っている人は多い。今回は日本人が5人いたのでラップアップも含めて少し話をしようという話になったのだが、結局パーティからそれぞれが去っていってしまった。まあ、それで良いのだが、時間をおかずに所感を交換できたら良かったなあとも思うのである。ちなみに、ベルリンの人のソウルフードがドネルケバブであることを初めて知った。検索すると、確かにそれを示す証拠がたくさん出てきた。翌日挑戦してみたのは言うまでもない。
※冒頭画像はベルリンの壁(アートは修復済みのもの)