CSRとOSS

今週、会社経営者の一人とCSRについて話す機会があった。

彼はストイックな人で自社がCSRに対応できているのか疑問に思っていたのだが、その会社はFOSS(Free Open Source Software)に多大な貢献をしている。私は、それだけで十分CSRに貢献していると思っていたので驚かされた。それを説明したら、彼はFOSSで商売しているのだから貢献は当然だと思っていたのでと驚いていた。その感覚は立派だと思うけれど、FOSSが充実すれば、社会インフラのレベルが上がるのだから、彼の会社だけでなく社会が豊かになるのだから、どう考えても社会貢献していると言えるだろう。

もちろん、商用ソフトウェアを否定するわけではない。大きな金が動くことで短期間で進歩が期待できるのは大きな魅力だし、投資した金を回収するとともに超過利益の配当を行うことも一種の社会貢献である。何も恥じることはない。ただ、独占、寡占で利益を確保し続けるのは良いことだとは思わない。それは社会コストを上げてしまい格差を拡大してしまうからだ。

FOSSあるいはデジタル公共財に厚みを加えるコストも、その維持コストも決してゼロにはならない。何らかの方法でお金を集められなければ持続性はないのだ。そう考えると、彼の「FOSSで商売しているのだから貢献は当然」という価値観は貴重だ。私は、世の中は善意でなりたっていると思う。同時に、善意は誰かの努力の上にしか存在し得ないのだ。

feedback
こちらに記入いただいた内容は執筆者のみに送られます。内容によっては、執筆者からメールにて連絡させていただきます。