憎しみをどう制御すればよいのだろうか

まだ分かっていないことは多いが、安倍元総理の銃撃事件は私怨に基づく犯行の可能性が高そうだ。

安倍元総理は影響力の強い人で、事件後惜しむ声も糾弾する声も大きい。追悼の行列も長いが、例えば『安倍晋三、死んだからといって悪人が善人になるわけでない』のような批判のメッセージも多い。いずれにしても死んだ人は生き返らないから、安倍氏のいない新たな時代を迎えたのである。宿願の憲法改正を実現せよといった彼の亡霊にすがるような動きも起きているが、もう事は起きてしまったのだ。私達は生きているのだから、彼がいない新しい社会を歩んでいく以外の道はない。

キーワードは特権意識だと思う。私は、所謂先進諸国で最初に一歩を踏み出したのは安倍だと思っている。2012年に彼は「日本を、取り戻す。」という強烈なコピーを提唱した。このコピーを誰が書いたかはわからないが、恐らく安倍本人ではないだろう。シンプルだが、日本人は特別な存在なのに、本来の地位が失われていると訴求している。こんな訴求を認めれば、その向こうに日本人の誰か(国家元首)が世界を統治する道を歩むことになる。正に帝国主義そのものだ。先の戦争で弾圧された記憶を持つ人には耐え難い言明だろう。

しかし、斜陽とは言え経済大国のメッセージのインパクトは大きい。まず2014年にクリミア危機が起き、次いで2016年には現在退任準備中のジョンソンがBrexitを成功させた。さらにトランプが台頭し、ついにウクライナ侵攻が起きた。安倍氏は、糾弾したが、あくまで個人的な感想だが、種を撒いたのは安倍だと思っている。クリミア危機があっても2014年も日露首脳会談をプーチンと持っており、ウクライナの権利はガン無視であった。今のウクライナの悲惨に対して日本の有権者の手は決して真っ白とは言えない。自覚しないわけにはいかない。

幸いなことにウクライナの人たちもほとんどすべての世界の人も日本を糾弾する論調は見つからないが、安倍の復帰を許したことは今の準世界大戦状態を招いたことを自覚すべきだと私は思っている。自覚してもできることはわずかだが、自分たちには関係ないと考えるのは正しくないと思う。

そういった背景はともかく、このまま分断がエスカレーションしていっても未来が拓けるとは思わない。

悔しさは破壊的な感情を引き起こす。安倍元総理の銃撃事件の容疑者は「特定の宗教団体に恨みがあり、その宗教団体と関係がある安倍元総理を狙った」と供述していると報じられている。事実として、実家は破産申告しているようで安倍氏がオンライン講演で称賛メッセージを送っている宗教団体への献身が仮定破綻の原因の可能性が高い。平和の暮らしが破壊されたという恨みが大きかったのだろう。見方によっては逆恨み、あるいは勝手な思い込みと言って良いかも知れないが、当事者は真剣である。私自身、今民事訴訟の原告の立場にあるので、ある意味でその気持を想像することができる。家族関係の崩壊を招いた対象に対する恨みは容易に抑えることはできない。私は、暴力に訴える気は全く無いが、裁判官はそのリスクを無視することはできないだろう。加害者が自分は正しいと思っていれば、その状況を想像することもできないのが現実だろう。

日本は、客観的に見れば極めて厳しい時期にある。中長期で見れば少子化の影響は破壊的だし、短期で見ても格差問題、女性差別をはじめとする差別問題は深刻で、自分ではどうすることもできない状況に追い込まれている人は確実に存在している。そのやりどころのない怒りは出口を求めている。

出口は本来は為政者に向かうし、それは合理的な選択なのだが、為政者は自らが矢面に立つのは耐えられない。だから、転嫁しようとする。それは外敵だったり、野党に負わせたりしようとする。その時に一番恐ろしいのが特権意識=選民思想だ。煽るものになびき、自分の力ではなく扇動者の幻想でより立場の弱いものを叩くようになる。次いで密告の正当化が進むだろう。本来あなた方はそんな不幸な状況にいるはずがない、そんな状況にしたのは中国のせいだなどと煽る。煽られた人はもう理性的な判断はできない。それが、戦争の歴史なのだと思う。

残念ながら、私は、その問題を解決できる即効薬はもっていない。それを訴求することがさらなる分断を生むような体たらくである。しかし、同胞同士で殴り合うような社会を望んでいるわけでもなく、寄留の人たちが片身の狭い思いをするような社会は嫌だ。とにかく、多様性に寛容になることを願ってやまない。特に権限を持つ人にこそ、そう思ってもらいたい。

あえて書くが、砧教会の金井美彦氏と佐分正彦氏には真実に向かい合うことを重ねて要請する。この世で逃げ切れたとしても、神は事実を知っている。もちろん、私が根本的に間違っている可能性は否定しないが、今の所事実は私の正しさを証明しているように見える。このメッセージを読んだクリスチャンは、ぜひ砧教会に真理の追求を求めてもらいたい。それは、日本の閉塞感の縮図なのだと私は思っている。砧教会のオフィシャルホームページは壊れていて読めないが、https://www.facebook.com/kinuta.church からメッセージを送ることはできるはずだ。私は、2020年6月7日に金井美彦氏は安倍氏と変わらない独裁者だと糾弾して約50年通った自分の居場所を失った。改めて、教会総会を開催して事実を明らかにしていただきたい。それが私にとって不都合な結果になっても構わない。