日本テレワーク協会のサードワークプレース研究部会の年度活動のまとめをやっている。
振り返ると、2016年度テレワーク最新事例研究部会で「ワークスタイル変革に資する第三の場(サードワークプレース)活用の可能性」を考察し、17年度にサードワークプース研究部会を始めたので丸5年ということになる。2017年度サードワークプレース研究部会報告書を読み直すと、何人も当時のメンバーが継続参加しているのが分かる。当時は三井不動産がワークスタイリングを始めた頃とは言え、まだコワーキングスペースは大手企業と関わりのあるものとは認識されていなかったので、各例会をコワーキングスペースを訪問しながら実施したのは、とてもインパクトがあった(研究報告書の説明資料)。
2019年度は「提言:企業は従業員のサードワークプレース選択に関する社内規制を緩和すべきである。」と書いた(テレワーク高度化に向けての提言)。発表は2020年の6月でコロナ中である。2020年度はCOVID-19 とサードワークプレースを発表。ここでは、以下の提案を行っていた。
⚫ 執務場所としてのオフィス、在宅、サードワークプレースの選択は ABW 特性に基づいて従業員の選択自由度を高めるべきである
⚫ 会社側に自宅の執務環境を向上させる施策の実施を推奨する
⚫ 在宅勤務にとどまらず執務環境品質の高いサードワークプレースの積極的利用を推奨する
改めて過去を見直すと、ビフォアコロナとアフターコロナで景色が一変したものの、コロナ前に時代の変化を想像させる動きは既にあった。在宅ではない集まって働くこと、オフィスを含めCoworkingの価値が問われているのは当時から変わらない。
一方で、コロナの犠牲者の情報を調べてみると、2022年3月28日時点のStatistaのデータによると、人口あたりの死亡者総計では、ペルーが最悪、アメリカが悪い方から17番目で千人あたり2.9名の方がなくなっている。約350人に一人。日本は101番目で0.2名とアメリカの10分の1、約5,000人に一人と低い。しかしながら、過去7日間の死亡者数で見ると55位で油断大敵である。つい最近まで日本より感染防止に成功していた韓国は過去7日間の人口あたり死亡者数では世界で一番悪い状態となっている。香港も苦しい。個人的には、安易に規制緩和するのは愚の骨頂と考えている。
集まることの価値とリスクは冷静に評価する必要があると思う。ワクチンや治療薬の効力は分かってきていて、現時点では集団免疫の獲得ができる可能性はほぼない。ノーガードでも絶滅はなさそうなので、絶望する必要もない。
私は、腰を落ち着けてニューノーマルを再考すべきだと思う。人が集まれば、この先もクラスターは発生し、一時のニューヨークのような悲惨な状態にはならなくて済むとしても、油断すれば一気に犠牲者が増える時期は続くだろう。犠牲者が増えるのを許容しているとじわじわと経済活動も痛む。今は緩和方向に風が吹いているが、結局ゼロコロナを目指しつつ経済活動を継続できる道を探るしかなくなるはずだ。
2020年の春から2年、当初のシュリンク状態から徐々に緩和して人によってはコロナ前の暮らしに戻った。しかし、今年も脱コロナは達成できるとは思わない。換気の効果測定を含め、感染防止効果の科学的な分析が進むことを期待したい。
さらに2年後、2024年の春にはコロナは消えていないだろうが、感染リスクに大きく怯えることのないニューノーマルライフスタイルは確立できている可能性はある。恐らく、ある程度今の中国のゼロコロナ対策に近いものになるだろう。実際にはゼロは無理だろうから、人口百万人あたり10名/週程度が警報の目安になるのではないかと考えている。現在の米欧基準よりはずっと厳しくなるはずだ。ただ、抗原検査技術が進歩すれば、警報が出ていない時期は検査習慣を除けば、何も気にせずに生活できるようになっているのではないかと想像する。もちろん、リモートワークは当たり前のものになるし、デジタル化はまだまだ加速する。私は、メタバース時代は来ないと思っているが、メタバース技術はビジネスにも暮らしにも大きな影響を与えるだろう。改めてアイデンティティが問い直される。
2024年の春には、Coworkingの本質が像を結び始めているのではないかと想像する。言い換えれば、民主主義が成立するための忍耐の価値の言語化が始まっているということなのだと思う。