いつの時代にも変化はある。戦後半世代を経て、私が生まれてからでも様々な社会的変化がった。
無くなってしまった大きな会社もあるし、相続を含め世代交代でトラブルが起きるケースは山ほどある。親から事業を引き継いだ人は、時代適応を進めないわけには行かないが、大塚家具のように失敗することもある。
私が生きてきた時代で言えば、もっとも大きな変化はインターネットだと思う。今も変化のゆりかごとして機能している。Wikipediaでインターネットの歴史は私が生まれた1960年から書き始められていて、就職した84年の前年83年にTCP/IPが台頭し、84年には日本でJUNETが立ち上がった。前職で東大経由でJUNET接続をしたのは87年だったと思う。もう35年も前のことだ。90年にはWebが動き始め、Windows95で日本でも一般人がインターネットに接続する時代を迎えた。
遅くても2000年頃には職業人あるいは研究者としての自分の周囲ではほとんどの人がメールアドレスを持ち、地理的な制約を超えて迅速なコミュニケーションが可能になった。i-modeが1999年に始まり、今では日本人でインターネットメールアドレスを持たない人は僅かだろう。
一方で、ビジネスの世界では対応が大きく別れた。Amazon前とAmazon後を考えてみれば良い。最初は単なる宅配本屋だったのだ。卸業者を破綻させ、小売店舗を破産させ、販売品目を拡大するとともにAWSでプラットフォーマーとなった。事業基盤が根こそぎ移ってしまったのである。対応が早かった会社で失敗した会社もたくさんあるし、対応しなかったことで利益を増やした会社もある。しかし、30年、一世代で見れば必ず対応しなければいけない。過去の良いところを力に変えられる可能性はあるが、社会インフラが変化してしまえば、どのようなビジネスであれ、もちろん行政であれ対応しないわけにはいかないのである。
いつ具体的な手を打つのが適切かは本当にケースバイケースなのだが、対応しない選択肢はない。
いくつかの事例に関わってきて世代交代は本当に難しいと思う。本質的には世代交代の難しさではなく、世代単位での環境適応なのだが、事業継承の場合は前世代との対比が強調されてしまうので難しさが増す。継承者の中には環境適応に関心が行き過ぎてしまって事業の構造を丁寧に理解するのを怠ってしまうケースもある。
変化は避けられないのだ。
古い世代の人が、なるべく過去の習慣のままで過ごしたいと考えるのは異常なことだとは思わないが、過去は良かったと煽る人について行ってしまうと一世代程度の時間を経て変わっていく大きな変化に取り残されてしまい衰退してしまう。保守は亡国だと思う。ロシアはその罠に落ちたのだと思う。アメリカや日本も含め衰退基調の場所は、同じ危機に瀕していることを自覚するべきだろう。
仲介者を必要としない社会への転換期にあるという理解を広く進めることが平和や安全につながって行くだろう。事業継承は、来たるべき未来から現在の事業を肯定的に見るところから始めるのが良い道ではないかと考えている。
時代観を示すのは国の仕事でもある。官僚の質と官僚や民間の能力を引き出す民意が必要だ。