持続不可能な財政 読了
日本総研の河村氏(内閣官房行政改革推進会議民間議員等)と元参議院予算委員会専門員(調査室長)の藤井氏の共著で、中々良い組み合わせだと感じた。藤井氏が社会保障・年金、税制に関する部分を執筆し、残りの大部分は河村氏が執筆している。コンサルらしい図表を多用して分析していて説得力がある。ただし、民間シンクタンクにとっては金の出元は顧客であり、顧客の意向を汲むことで商売が成り立つから、客観性という観点では割り引いて考えないわけにはいかない。それにも関わらず、かなり行政施策に対して批判的な内容になっている。実態は更に厳しい状況にあると読むべきだろう。
日本の財政が傷んでいるのは、誰であれ、少しでも事実情報に当たればすぐわかるが、個々人が努力したところで問題は解決しない。解決するためには、制度を変えないわけにはいかず立法機関が適切な行動を取らなければいけない。しかし、国会議員は選挙で選ばれなければならないので、財政より人気取りを重視せざるを得ないという問題がある。結果として、トランプやアベクロのように博打を打つ政権が生まれるが、よほどの幸運に恵まれない限り博打は負ける。仮に短期的にうまく行っているように見えてもだ。一方、役人は官僚であっても雇用は保証されている変わりにプロとしての働きが期待されている。言い換えれば、事実を直視して持続性のある施策を立案、実行していくのが使命となる。予算委員会専門員は事実に基づく情報を予算委員会に提出して、議員が合理的判断を行えるようにしなければならない。役人とて人間だから、自分の考えや政治的な信条が無いわけがないが、プロとして守るべきことは守らなければならない。事実と向き合っていれば、明らかに駄目だとわかっていることを書くことはできない。しかし、総理・内閣が強い人事権を持つと、忖度が生き残りの源泉になる。事実を直視できなくなれば国は滅ぶ。
河村氏は、支配の構造について敏感な感じがする。「地方交付税制度のからくり」で憲法で保証されている地方自治権がどのようにして失われてきているかを明らかにしている。地方自治は民に近いから、不都合な現実を隠すことは難しい。しかし、課題解決するためには金がいる。地方税が足りなければ、国税からもらって来るしか無い。地方が国に頼るのが常態化すれば、政商が跋扈するのは自然なことだ。一方、提案を書いている5章では日本人の良心という言葉を使うなど、現実より感情に訴える面が鼻につく。
副題に「再建のための選択肢」とある。5章で具体的に述べられていて、目安として適切だと思うが、恐らく政治制度の改革なしには選択できないだろう。一言に集約すれば、トランプや高市のような独裁指向の政治家を選べば、結局割を食うのは民だということである。私は、決定的な破綻や敗北の前に軌道修正をしなければならないと考える。
最近、読んだ良かったと思える本の比率があがっている。この本もまた読んでよかったと思える本の一冊となった。