Ambitious site builders

hagi に投稿

Drupal Advent Calendar 2022経由で、Drupal の ambitious site builders とは何かを読んだ。記事に触発されて改めてAmbitious site buildersについて考えてみた。少なくともDrupalの世界では私は開発者ではない。多少経験を積んでいるのでサイト構築者としては中級以上を自負しているが、PHPのコードは書かないからDeveloperでもフロントエンドスペシャリストでもバックエンドスペシャリストでもない。時にTwigは書くし、SCSSで多少の見栄えのカスタマイズに挑戦することはある。今後、さらなる一歩に踏み込む可能性はあるが、可能な限りサイト構築者でありたい。その上で、サイト構築者の指導者として社会貢献したいと考えている。言い換えると、誰かのために代わりにサイトを立ち上げるより、誰かがサイトを立ち上げる時に頼りになるような存在を目指している。もちろん、開発ができるに越したことはないし、フロントエンドスペシャリストやバックエンドスペシャリストのような専門性があればより頼りになる存在になれるだろうから、高みを目指したほうが良いだろう。

Drupal の ambitious site builders とは何かで引用されているDriesのDrupal is for ambitious site buildersには以下のように書かれている。

Attracting more Drupal site builders will increase Drupal's potential user base, and in turn create a more open, accessible and inclusive web for all.
より多くのDrupalサイト構築者を惹きつけられれば、Drupalの潜在的なユーザー層を厚くできる。結果的に、あらゆる人のための、オープンで障碍のある人にも優しく、多様性を許容するWebの普及に貢献できるだろう。

Drupalは丁寧に構造化され、多言語対応に優れ、安全性にも配慮し、(私はまだ十分に理解できていないが)Accessibilityへの配慮も丁寧なプラットホームだ。特にDrupal 8で大きく書き直されて、素晴らしいCMS、あるいはCMFとなった。

私が、Drupalに関わり始めたのはDrupal 7からで、エキスパートの人に環境を立ち上げてもらった後、管理画面からいろいろなモジュールを試してみて、経験を積んでいった。私自身は元々ITエンジニアだからLinuxのコマンドラインに恐れを抱くことはないが、サイト構築者としてDrupalの管理画面経由でのみサイト構築を進めていた。しかし、Drupal 8からはcomposerを使った作業を行わないと導入できないモジュールが多くなった。もちろん、それには理由があってDrupal以外のモジュールのバグフィックスに対応したり整合性や高いセキュリティを確保するには合理的な選択肢だ。そのおかげで、Google Loginが簡単に実装できたり、地理空間情報が扱いやすくなったりとメリットはたくさんある。しかし、非ITエンジニアはLinuxのコマンドラインを触らなければならなくなった瞬間に、ああここは私のいる場所ではないと思ってしまう。でも、ちょっと頑張ってcomposerまでは触ってみるかとか、ブログなどを検索しながら、Drupalの環境をコピペ多用で何とか立ち上げてみようと考える程度に挑戦的なサイト構築者は存在する。私は、そういった人のことをAmbitious site buildersだと思っている。やりたいことがあって、多少人の助けを借りても自分で何とかしようと考える人だ。

Drupal 10からはDrupal 7の時と同様に管理画面からモジュールのインストール、アンインストールができるようになり、Drupal coreのアップデートもできるようになる(ただ、10.0ですぐに全部ができるわけではない)。つまり、SaaSが対応すればサイト構築者は管理画面だけで作業が完結するようになる。これによってAmbitious site buildersがDrupalに挑戦する壁が下がり、ただの紙芝居のようなサイトではない本格的なCMSに手が届くようになる。素晴らしいことだと思う。

Driesの記事には、

What is an ambitious site builder?

An ambitious site builder sits in between the developer hand-coding everything using a framework, and the content author using a SaaS solution. There is a gap between developers and content authors that Drupal fills really well.

と書かれている。Drupalで仕事をする人は開発者側から見るから、Ambitious site buildersはコンテンツを書く人と自分たちの間にいる人という風に位置づけてみる。全くおかしなことではないが、ビジネスの推進者は基本的にはコンテンツを作る側の人だ、だからビジネス推進者から見ると、Ambitious site buildersは自力でDrupalを使いこなしてビジネスの高度化を進める人ということになる。もちろん、全てを自分でやろうとするのは現実的とは言えないが、助けを借りるとしても自分たちで何とかできる方が変化には強い。挑戦を続けていればスキルも上がっていく、何をアウトソースして何を自前でやるかは経営上の永遠の課題だが、コンテンツ管理は本来アウトソースしてはいけないプロセスだ。構造的で良い管理プロセスを確立できるかとどこまで遠くに行けるかは直結している。ビジネスが成功し始めたら、必ずAmbitious site buildersが必要になる。

アウトソーサー側でなくビジネス側にいるAmbitious site buildersは転職にも強くなるだろう。そろそろ本格的な成長期に入ろうとする経営者から見れば、経験を積んだAmbitious site buildersは魅力的だ。日本ではまだまだ雇用流動性が低く、中々収入面で報われる機会が得らないが、やがて報われる日が来るだろう。ビジネス推進側にAmbitious site buildersがいれば、アウトソーサー側のスペシャリストも腕をふるいやすくなる。私は、DriesがAmbitious site buildersのためにDrupalはあるのだという宣言は慧眼だと思う。言われてみればそのとおりであるべきだ。

マーケティングに関わる人もビジネス推進側の人と言えるから、https://twitter.com/gengo_k氏もAmbitious site buildersの一人なのだと思う。

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コメント

今日は2022年12月25日。メリークリスマス。

私が寄稿した後に、サイトビルダーに関する記事として、

開発者の目線で ambitious side builder 像についてなんか書きます

と最終日の

Drupal創設者の発言に見るDrupal 11の展望予想 -サイトビルダー冬の時代の終焉

が掲載されている。最終日の井上さんの記事は、最終日を飾るにふさわしい素晴らしい記事だと思った(実際にはブログはもっと前に公開されて読んでいたけれど、アドベントカレンダーに掲載されるまで待っていた)。

私は、Drupal7時代にRulesモジュールを使いこなすレベルまで成熟していなかったが、Drupal8でサイトビルダーとして経験を積むうちに、どれだけ重要なモジュールかを思い知ることになった。今後の期待候補は、ECAモジュールだと思うけれど、まだWebformとの連携が実現されていないので、まだ満足できる環境にはない。

一方、gitの一般化もあって、開発環境、テスト環境、本番環境を用いた管理が容易になりAcquia Cloudあるいはスケーラビリティの高いCloud Nextでインフラ側のサービスレベルが上がり、ある程度費用を負担可能な企業サイトやユーザー数の多いサイトであればインフラ問題をクラウドに頼ることができる時代が到来しつつある。

サイトビルダーが参入する壁が下がれば、当然コントリビューションモジュールの需要・供給が増える。機能拡張時など開発費のクラウドファンディング化も進むと思う。本格的なプラットフォームでかつ参入障壁が下がればDrupalの未来は明るいだろう。

Drupal 10.1辺りから、使いやすさは上がってくるはずだ。自己完結型のDrupal7に比べるとDrupal8は他のプロジェクトに依存していることもあってアップグレードへの追従は避けられない。不利とも言えるけれど、進化のペースも上がる。サイトビルダー冬の時代の終焉に期待したい。