同盟の転機

同盟の転機 読了。

出だしは「我々は今、「ピーク・ジャパン(Peak Japan)」とも呼べる時代に生きている」である。日本人でその感覚を共有できる人はあまりいないのではないかと思う。むしろPeak Americaの方がわかりやすい。Apple、Googleはもちろん、AI分野での台頭やイーロン・マスクのビジネス的な成功は誰も否定できない。一方で、関税政策、COP離脱、イラン侵攻などトランプの暴挙はパックスアメリカーナの終焉を想起させるものだ。捨象すれば、ハードパワーが後退しソフトパワーが台頭するという歴史観を語った本と言えなくもない。ただ、ソフトパワーが勝つと言っているわけではなく、ソフトパワーが効果を発揮しやすい環境にあると言っているだけでもある。日本は経済的に極めて厳しい状況にあることもあって、長期で考えれば破滅に至るような高市を選び、ハードパワー依存を目指すようになってしまったが、外から見れば安倍同様その合理性は皆無である。一方、安倍はソフトパワーを理解していたことを本書から学ぶことができるし、著者の高市への期待も書かれている。心の広さが厳しいテーマを扱っているのに不快感を感じさせない源泉となっているように思う。

著者のJoshua W. Walker氏は1981年生まれで2歳から18歳までを北海道を皮切りに日本で過ごした牧師の息子でイエール大学大学院修士、プリンストン大学大学院政治学博士号取得、ユーラシア・グループで部長職を勤めた日本語を流暢に話すアメリカのエリートである。キリスト教倫理が基本となっていることもあり、現在のトランプのアメリカに憂慮しているが、同時にアメリカの愛国者でもある。

本書籍を特徴づけることの一つは翻訳のスピードである。高市・トランプ会談にも触れられているように「今」現在のことが日本語で読める。技術の進化の賜物だろう。

現状の整理を序章と一章のトランプのアメリカで行った上で、二章道産子で自らの経験とアウトサイダー視点の獲得に触れられている。2歳で日本に来ても日本人にはなれない。大変な思いをしたことは容易に想像できるとともに、その艱難を乗り越えたことが成長、あるいは高い視座の獲得に役立っていることがわかる。6章成功事例から学ぶ日米の未来では、トヨタやダイキン、公文とスズキ・メソードが取り上げられている。敗戦のどん底と戦後の経済成長がなければありえなかった事例だと思うが、道産子アメリカ人の分析は示唆に富む。終盤7章は「キズナ」と名付けられてて、特に「市民であることとリーダーシップ」の節のインパクトが大きい。英雄あるいは偉人依存の時代は既に過ぎ去っているという考え方に共感する。終章の提言には賛同できない部分も少なくなかったが、一つの考え方として十分な説得力がある。

この書籍も心から読んで良かったと思える本だった。

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