民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―

民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―は2018/09/27に発行された本だ。非常に興味深い。

これまでアメリカは民主主義のお手本の国というイメージがあったが、これまで幾度も危機を乗り越えてきたことを知った。戦後の日本の民主主義は、アメリカの民主主義を純化したような形で導入され、敗戦でもう二度と戦争は懲り懲りだと考える人が多かったことから新憲法が受け入れられた。一方で、どこにでも強い支配者を目指すものはいて、強い国という幻想にすがる人々を扇動することとなる。

ヘンリー・フォードが大統領を目指したのも知らなかったし、リンドバーグも目指していたことも知らなかった。ポピュリズムは本当に怖い。そして負けがこんで来た時(格差が拡大した時)に発症するのだ。言い換えれば、何かをなそうとして上を向いている人と、不安に負けて見下したいという欲望に堕ちる人の均衡の破綻と言えるだろう。

客観的な事実や数字よりも、叩くことの快感を優先するようになったら、人間としては終わっていると言わざるを得ないが、一度堕ちてしまうと自分を冷静に見ることができなくなる。それが集団ヒステリーを生み、人を(たとえ自殺でも)殺し始める。自分がその一端を担っていることを自覚できない。

この本では、まず民主主義の脆さを各国の事例から例証しアメリカがどうやってその危機から逃れてきたかを説得力のある形で示している。第一次トランプ政権での民主主義の崩壊は、共和党の没落が原点にあったと読める。そういう時にギングリッチのような扇動家が現れ二極化の対立構造を作り出す。いわば「あんな人達」発言である。意見の違う人を敵扱いすれば、民主主義は成り立たない。

第1章で本質的なポイントを簡潔な独裁主義的な行動を示す4つのポイントとしてまとめている。

  • 憲法にしたがうことを拒む(憲法違反の閣議決定をやる:総会決議を尊重しない)
  • ライバルを危険分子だとみなす(あんな人達には負けるわけにはいかないんです:異論を唱えるものを排除する)
  • 反社会勢力とのつながり(統一教会:なし)
  • 市民的自由を制限する法律や政策を支持する(夫婦別姓の拒否:継続的礼拝出席者に対する会員復帰請願の無視)

かっこは日本のしばらく前の安倍政治にマップしたコメントだ。:の後は砧教会の私の現状である。暗殺はあってはならないこととは言え、日本はギリギリで独裁制の発症を免れ、虚偽にまみれていた事実が明らかになることで、多少振り戻しが起きて与党は過半数を失った。しかし、少なくない野党はポピュリズムに日和っている。砧教会は、まだ完全には腐っていないと考えてよいだろう、しかし、高潔な組織とは言えなくなっているので十分に注意を払うべきで、相当な覚悟がない限り足を向けないほうが良いだろう。準独裁者を講師に招く神学校は十分な注意を払ったほうが良いと思う。いくら教勢が落ちていても、牧師のなり手が減っているとしても、日本聖書神学校や立教大学は許して良いことのハードルを下げない方が良いだろう。日本基督教団もまがいものを教壇に立たせるべきではないから、速やかに按手を撤回することを推奨する。

世界的なトレンドであることは間違いないし、第二次トランプ政権は彼が言う弱い国や弱いリーダー、弱い政府はおいていけということになり、貧困は進み、アメリカ内は言うに及ばず世界中で治安の悪化を招くだろう。

興味深いのは第9章でトランプの再台頭を想定した上で「民主主義を護る」処方箋を書いてあるところにある。

私なりに一言で書けば、意見の違う人であっても、同じ人間であって敵ではないという原点に立てということだ。原点に偽物ではない愛を置けと言っていると言い換えても良い。

一読をおすすめする。「誠実」の本質はいかに厳しかろうが事実に向き合うことなくして成立し得ない。

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