今年も例年通り11月はエストニアで過ごす。
エストニアに行くと、通奏低音のようにウクライナ侵攻への怒りとロシアへの恐れが感じられる。改めて学びたいと思って図書館でウクライナ全史【上】を借りた。原作はThe Gates of Europe:A History of Ukraine(※画像はhttps://dod.overdrive.com/media/2515784 から引用させていただいたもの)。
島国の日本と違って、ユーラシア大陸は広く、様々な民族集団が覇権を競ってきた歴史がある。
Wikipediaのキエフ大公国の記述では、Роусь(ルーシ)という言葉が紹介されていて、英語版のWikipediaはKievan Rus'という表題となっている。そこに以下の地図が出ている。本書によれば、ルーシという言葉は近年になって提唱されたもので、当時は使われていなかったらしい。なんとなく豊かな辺境というイメージがあるが、キーウは繰り返し出てくるドニプロ川のほとりの要衝である。
現在のエストニアの国境と若干被っているが、比較にならない広大な領域を有していた。
ポーランド・リトアニア連盟の時期もある。ポーランドと言うと最初にイメージするのはワルシャワで、そこにもバルト海に注ぐ大河が流れている。川が国境を形成することは多いが、川のほとりで景色を眺めていると、攻防の記憶が感じられる。
本書は、原題にあるようにウクライナ地方を黒海北側の東方とのゲートウェイと捉える形でウクライナ史を描いている。誠に血生臭く、原題に生きる私はとてもルーシの時代では生きていけなかっただろうと感じさせる。同時に、多くの列強に繰り返し支配される歴史を通して自決権の重要さを世代を超えて理解するようになっていることを想像させる。ある意味で、エストニアと同じく真の独立に対する執念と言っても良いかもしれない。
読みやすい本ではなかったが、手にとって良かったと思っている。帰国したら、下巻も借りてみようと思っている。