東京都サテライトオフィス交流フェアに参加した。
メインセミナーも、3つのトークセッションも、聴き応えのある内容だった。
石山アンジュ氏の基調講演で印象に残ったのは、シェアハウスに多く触れていた点にある。ある意味シェアリングエコノミーの頂点とも言えるかも知れない。一緒に暮らせば、ハウスキーピングは必須となる。ホテルのようなサービスモデルの場合だと住民は面倒なことを気にせずに過ごすことができるが、シェアハウスだと全員、あるいは誰かがカバーしなければいけない。名もなき家事問題でもある。当初はうまくいくが、メンバーの増加や入れ替え、あるいは環境変化で回らなくなるようなケースもあるだろう。サテライトオフィスとコミュニティコワーキングの似て非なところにも通じる。サービスドオフィスは本質的にアウトソーシングサービスでシェアオフィスと言ってもプロのサービスを対価を皆で負担することで個々では解決できない問題を解決していく。対すれば、シェアハウスは自治型だろう。ゼロイチではなく、バランスをどこに持っていくかという話だ。シェアと所有を対比するか、肩寄せ合って皆で所有して内輪でシェアするかは微妙な問題と言える。コミュニティの内側と外側での区別あるいは差別は避けられない。
大分脱線したが、石山氏の提言は傾聴に値すると思ったのが正直な感想であり、質疑で挙手しなかったが、どう制度を設定すべきかについて聞いてみたかった。彼女は政治家に向いていると思う。
「3年先のオフィス戦略とは ハイブリッドワークに併せたワークプレイス整備のポイント」は、30分でランチが取れなかったので若干遅刻した。発言では、株式会社月刊総務の豊田健一氏の真摯な姿勢に圧倒されたというのが私の印象である。総務業務はトレンドとしては、アウトソースされる宿命にある。個別企業の総務は情報量が十分でないので、サテライトオフィス視点ではプロのサービスドオフィスにはまずかなわない。しかし、月刊総務のようなメディアからの情報支援を受ければ、ある程度踏みとどまることは可能だろう。
情報を得る手段がネットに片寄る中、こつこつと現場の声を収集する価値は高い。
「3年先の自分の働き方を変えるために働く場所・働き方の選択肢の広げ方」は3人の話者の2人は知り合いで、予想通りの発言も少なくなかったが、村田弘美氏のパリのコワーキングスペースの話は、知らなかったことも多く惹き込まれた。また、結局一人会社を10年以上に渡って運営してきた身としては、副業解禁で当初の輝きを失ったように見える一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の児玉真悠子氏のコメントも良かった。副業解禁でフリーランスという言葉が過去完了形になりそうな中、個人の自立を中心においた視点は貴重だと思った。
最後の「どこも同じではありません! ~利用企業・団体の価値向上につながるサテライトオフィス、シェアオフィスの選び方~」は大沢さんらしいリードで悪くなかった。聞きながら、自分が就職した時の会社は小さなソフトウェアハウスでちょうど成長初期の段階で、パトロンのオフィスには収まりきらずにB級の不動産物件を複数契約していた時期から、1000人を超えるビルの一棟借りの時期までの経験が走馬灯のようによみがえった。現在、複数のベンチャーに関わりを持っていて、マンションの一室を借りてオフィスにしたり、人数増にあわせて引っ越ししたりと現実は昔とほとんど変わりない。WeWorkはそんな現実を激変させるような挑戦をしたが破産してしまった。しかし、ベンチャーの経営者はなかなか気が付けないが、ワークスペースの質は、転職してくる人からすると下方硬直性がある。覚悟を決めている人には相当な許容範囲があるが、それでも限界はある。所有モデルを脱却したほうが良いと思うのだが、残念ながら日本では選択肢がない。このセッションに出て、とても残念に思ったところだ。米欧では、グレードの高い大型シェアオフィスが台頭している。1000席を超えるスペースなら、複数のワークセッティングを提供でき、会議フロアとか、静粛フロアとか、喫茶スペースなども配置できる。珈琲やビールは無償でなければいけないわけではない。IT化が容易になり、サービスドオフィスは商売だから、人が少ない曜日にフリーランチやフリードリンクを設定するというやり方もある。大きなスペースには、大きな可能性があるのだが、何か日本のスペースはちまちま感がつきまとう。高価格帯のサービスも床面積が小さい。逆に言えば、利用者側のマインドが保守的なのだと思う。保守は亡国だ。
出展ブース、出展社には幅があったが、コワーキング系もエンタープライズ系も知っているブランドが多かった。印象に残ったのはSERVCORPだ。Regusと2強だった時期と今とは勢いに差があるが、私はまだ終わっていないと思っているので約10分パートナーシップマネージャーと話した。その地位と比較すれば、著しく謙虚で驚かされた。企業は人が動かしていると改めて気付かされたのが収穫だった。
良い体験となった。湯田さんの力は大きい。何か、村の古老感があって居心地の良さと悪さの両方を感じた。私が前列に座っていると圧を感じると言った人もいるし、難しい質問が飛んできたらどうしようとナーバスになったという話もあったのだが、私から見れば、遥かに先を行っている人たちだ。長くいるからといって先頭を走れるわけではない。
まだまだアーリーアダプター時代が続いているとは言え、確実に時代が動いているのを見られたのは幸せなことであった。