人材育成

海外カンファレンスに派遣するか否かという議論に接して昔のことを思い出した。

前職では、それなりに発言権があったので、スタンフォードの客員研究生に3名、重点的海外出張者を2名選定した。成長の形はそれぞれ違うとは言え、5人とも大きく成長した。今、会社に残っているのは一人しかいないが、業界の有名人に育った人もいる。いつも気にかけていたのは、技術者としてのポテンシャルとビジネス志向の覚醒可能性だった。予算配分は均等ではなく、大きく偏らせていたので、批判的な声があることは知っていたが、そんなことを気にしていたら、ブレークスルーなど起こせはしない。悪平等は衰退を導く。

元をたどれば、なぜか優遇されて一人米国出張を数多くさせてもらったことにある。今振り返れば、カンファレンスで知見が得られるのはもちろんだが、企業訪問を多く含めることで、ビジネスチャンスを得ようとしたところに特徴があったと思う。事前準備に時間をかけ、可能性を探りつつ、たくさんメール等でコンタクトをとって出張計画を立てていた。人それぞれだから、真似をすれば良いという風には思わないが、できれば計画を綿密に立てて、一人で動くのが良いように思う。実際には、計画通りに行かないことも多いし、期待していた話と実体が一致することはむしろ稀だ。自分の状況にも波があるので、全然手応えを感じられない時期もあった。結果的に失脚したのだから、正しい考え方だと主張することはできないが、まだ打てる自信はあった。ただ、独立した時に、その自信は多くの人に支えられていたからこそのものだったことに気がつけていなかったのは恥ずかしい。まあ、それを含めて自分である。そういった経験を踏まえて今を生きるしか無い。

今は、昭和、平成の昔とは違うから、違うやり方があるような気もするけれど、普段行かない、普段会わない遠くの人と接点を持つのは、重要だという思いは捨てられない。自分が若かった時には明文化されていなかったが「人が育って一人前になる会社」というフレーズはとても好きだった。

事業をうまく軌道に乗せて持続的にするには、短期的なハンドリングの巧拙が大きく影響するのは間違いないと思うけれど、遠くを見ないようではちっとも面白くない。遠くを見るのが好きな人が生き残れる会社は化ける時は化けると思う。まあ、確率的には僅かだろうが、挑戦しない人生はつまらない。その人にとってやるべきことをやっていれば、時に苦しい思いをしても0簡単に野垂れ死ぬことはないと信じている。よくよく考えて挑戦したら良いと思うのだ。

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