令和6年能登半島地震発生から1週間

hagi に投稿

2023年1月1日に地震が発生した。その瞬間は初台の実家でたまたま家族と外を見ていた。

揺れを感じて私はXを見た。TVをつけNHKを見た。すぐに思い出したのは、東日本大震災の時のことだ。前職のオフィスにいた。取締役の一人が迅速に安否確認に着手するのを見て、ちょっと感動したことを思い出した。3時間程度でほとんど全員の状況を確認できたのはバックオフィスの強さだったと思う。上場とともにBCPを含め整備が進んだのは大きかったと思う。データセンターの事業継続も確認され、顧客への連絡も自律的に行われていた。もちろん、完璧ではないが、何をモニタリングして課題を整理して、事前に決まっている優先順位や認識できていなかった優先事項を判断し事態に対応するというプロセスは組織の大小に関わらず類似だろう。

一週間経過したが、NHKは全容はまだわかっていませんと繰り返し報道している。もちろん、簡単なことでないのは承知しているが、なにか変だと思う。まず人命という観点で見れば、そもそも被災地に地震発生時にどれだけの人がいて、支援が必要な人、死亡者を含めて本人に連絡が取れない人がどれだけいるのかといった総数の把握がなされるべきだと感じるのである。すごく単純化すれば、被災地に限定することなく全国民と入国中の人達の安否確認をすれば良いように思う。1億強のデータを管理することは今のICT技術であれば無理なことではない。技術的にはマイナンバーまたはパスポート番号等で安否を報告させれば良いように思う。帰省中の人や旅行中の人もいるだろうから、被災地の住民基本台帳をベースにした調査ではカバーできないのは明らかだ。今は、制度的にも個々の市民のリテラシー的にも実施は困難だと思うが、企業だと当たり前のようにできている安否確認が国のレベルでできないのは残念なことだと思う。

今回の地震に関わるサマリー情報は、内閣府防災情報のページの令和6年能登半島地震による被害状況等についてで公開されている。私は、首相官邸の令和6年能登半島地震に関する非常災害対策本部会議(第6回)から件のページにたどり着いた。非常災害対策本部会議の資料と議事録は開示されているが、見ていてちょっと違和感を感じた。

第6回(令和6年1月7日)資料を見ると、防衛省からの災害派遣の報告で、どれだけの実績を出したのか、どれだけのリソースが投入されたのかは書かれている。しかし、全体としてどれだけの人が支援の対象となっているかはわからない。第5回(令和6年1月6日)議事録では、内閣危機管理監の被害状況等報告が最初に書かれている。人的被害は書かれているが、支援対象者の総数はわからない。防災担当大臣の報告では、32,433名が避難生活を送っているとあるが、全体がどうなのかがわからない。やったことは書かれているのに、全体を把握し、情報開示する動きが鈍い。ゴールは当然全員の救済であり、優先順位の設定で計画を立て、被災者がどれだけ耐えれば良いのかを想像できるようにする必要があるのだと思う。

山本太郎のポストの3で、【提案◎ いつまでに出来るかの見通しを示せ】とある。彼の動きには不適当とする意見も多いけれど、この提案はその通りだと思う。政府・行政はやれることはやっていると思う。リソース限界もあるし、動けば成果はでるだろうが、被災者から見れば、自分のところに助けが来るのか来ないのか、いつまで待てばよいのかは最大の関心事だろう。【提案◎ いつまでに出来るかの見通しを示せ】に応えるためには、情報把握が欠かせないと思うのだが、その動きが鈍すぎるように思う。

議事録の非常災害対策本部長(内閣総理大臣)発言は、やることばかりが書かれていて、まず正確な情報を集めよという指示はない。当たり前のことだから言わないということなのかも知れないが、全体状況の把握なしに見通しを示すことはできない。厳しく言えば、頑張ってはいるが短視野で行きあたりばったりな災害復旧活動指示といえる。

首相は非常災害対策本部長としての情報の扱いに対する感性が足りていない気がする。あるいは、周りを支えるスタッフの問題かも知れない。今非難してもしょうがない。しかし少し長い目で見れば、政治家側より行政側を強化しないといけないのだろうと思う。縦割りの弊害を軽減するためにもデジタル・ガバメントへの進化を加速しなければいけない。安否確認程度ができない政府は時代遅れだと思う。

これまで積み上げてきた制度が重荷になっている部分と力になっている部分がある。変化の過程で一時的な不利益を得ることがあっても変化を恐れてはいけないのだと思う。まずは、透明性を上げることが肝要だと思う。

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コメント

2011年頃は、安否確認は部署単位で階層的だったけれど、やがて第三者安否確認サービスでフラットに一気に確認できるようになった。もちろん、拾いきれない情報をプル型で収集するには階層的なアプローチは必要になるが、ワークロードは圧倒的に小さくなる。デジタル・ガバメント時代は、家を基本にする情報収集は必要なくフラットにやれば良いから外国人を特別扱いする必要もない。住民票がどこにあるかの重要性も下がり、個がどこにいるか(被災地域の中か外か)が安否確認で最低限必要な情報になる。被災地域への出入りを把握すればリアルタイムに総数の把握も可能になる。

もちろん、そんなことは行政の人も分かっているだろう。健康保険証とマイナンバーカードの統合でモタモタしているようではデジタル・ガバメントの時代を迎えることはできない。一方で、プライバシーと権利の問題を今の家制度の呪縛から脱却するとともに、個人にオーナーシップを移さないとディストピアがやってくる。真剣にデジタル・ガバメントに取り組む政治家が増えること、彼らが支持される社会になることに期待したい。