チュニジア新憲法案、国民投票で承認へ 大統領権限拡大に懸念という記事が出ている。チュニジアはアラブの春の象徴なので、アラブの春の終焉として嘆く声もある。
ソ連崩壊後やウクライナの独立後のことを考えると、独裁政権が崩壊しても社会は容易に変われないことがよく分かる。エネルギーや食料基盤などは往時の体制を無視して回すことはできない。民主化勢力が腐敗の一掃を目指しても、一日で事業主体を交代させることはできない。警察や軍隊も同様で、指揮者は変えられたとしても染み付いた(汚職)習慣は変えられない。当然、さまざまな抵抗が起きる。新しい勢力は不利を抱えた船出となり、そう簡単に安定しない。
自然災害や、戦争を含む環境変化があれば、守旧派には格好のチャンスとなる。古い勢力をある程度統率できる古いリーダーが本気を出せば、直近の問題解決能力で負けることはない。一定の期間を経て本格的な体質改善が進めば、再逆転は起きなくなるだろうが、簡単なことではない。実際、NYタイムズに「Mr. Saied bled support as he prioritized political reforms over the failing economy, even as Russia’s invasion of Ukraine (ウクライナ有事にも関わらず財政健全化を優先して支持を失った)」と書かれている(Tunisians Vote on Constitution That Could Threaten Their Democracy)。そして、下野した守旧派は権力指向を強めるから、時に悲劇的な結果を生む。
日本の政権交代でも類似の問題は起きているし、オバマの変革はトランプを生んだとも言える。逆に、民主的ではないが強権的に汚職防止を推進した中国はある種の体質改善を進めることができたと思う。ただ、強権的な手法は例外なく腐敗を生み、パフォーマンスは低下してしまう。
現実的な問題として、食えなきゃどうにもならないから、民主主義より強い経済を優先する方向に民意が傾くのは自然だろう。
朝三暮四と言っても、今の不満を解消できる期待感がなくなれば人心を掌握することはできない。
それでも、自国優先主義や既得権確保ではなく、皆で共に良い未来を目指すように愛の世界を訴えていきたいと思う。