web3時代は来る。私は確実に来るとふんでいる。
エストニアのeIDは非常に優れた仕組みで、デジタルアイデンティティとして極めて優れた機能を提供している。公的認証の有利なところは、国などの強権を有する主体が、アイデンティティを保障するところにある。義務化すれば、網羅的で確実性があり、法体系に組み込めば、QOLを向上させられる良さがある。マイナンバーも同種のものだが、根本的な問題はオープン性がないところにある。
アイデンティティには様々な側面があるが、私は最大の機能は約束の確実化にあると考えている。子供の頃に言った言わない問題に遭遇しなかった人はまずいないだろう。非常に簡単に言えば、嘘をついたことを証明できるかどうかは正義の実現には欠かせない。同時に寛容性が高くなければ、正義の強制は破壊的である。
web3の背景には、既存秩序への不信がある。日本でも政治家がどう見ても嘘をついているのに罰から逃げられるように見えることがあるが、日本に限らない。ロシア、中国は言うに及ばず、アメリカでも事実を曲げることが平気で行われているように見える人は多いだろう。インターネットが動き始め、nntpが機能し始めた時、これで事実が力を持つ世界が来ると思った。webの前に既にweb2.0時代は見えていた。ある意味で、web3が見えていたとも言える。compuservのような企業を必要としない双方向メディアは既に存在していたのだ。現実には、BBSも含めて、強くなければ生き残れない空間に持続性はなかったわけだが、得られた知見も小さくはない。ある意味で、wikipediaは何とか生き残った末裔と言えるだろう。
匿名性と実名性の得失には今も答えはない。実名性を高めれば知力での強者優位になるし、匿名性を高めれば金や扇動が力を持つ。どちらにしても上位5%に入らなければ主権者になれない。個人的には知力で強者が優位な方が良さそうに思うが、共産主義、社会主義の失敗は知力での強者は倫理的であることとは連動しないことを示している。
漸くdiversity & inclusionという言葉が出てきているが、少なくとも法制化ではEUはともかく米日はいまだに力が優位をもつ時代が続いている。
前説が長くなったが、デジタルアイデンティティの行方に強い関心がある。
一番近道は、Google IAMだろう。Google accountは国を越えているので非常に具合が良い。一方で、Googleは営利企業なのでいつ邪悪化するか分からない。
二番目の近道は、oktaだろう。Auth0を買収して積極的な技術開発を行っていて、その視座はGoogleをインフラ側から崩壊させる潜在力を持っていると思う。
We See Decentralized Identity in Our Futureの最後にあるビデオは非常に示唆に富む。アイデンティティを個人に取り戻した上で、個人が組織や社会に対してGrantするという世界をイメージさせる提案を行っている。
一方で、oktaが優れたとしていて、IAMあるいはアイデンティティウォレットで新時代と構築できたとしてもそれはスキームとしてはweb2.0の域を出ていない。他にサービスを持たなければ邪悪化しにくいのでGoogleより低リスクとは言え、金が足りなくなれば邪悪化するだろう。
web3に正面から向き合おうとしているのはONT IDだろう。DIFを規範として尊重しているし、web3的である。しかし、ユースケースビジョンで見ると、oktaには遠く及ばない。将来性はあると思うが、まだ力不足感はある。
oktaがweb3化できるのか、ONT IDまたは別のweb3 nativeが台頭するのかはまだ分からないが、少し長い目で見ればGoogleの時代はやがて終わるだろう。もちろん、会社は残るだろうし、歴史にも残るだろうが、web3の時代にはweb3の時代への世代交代は起きるに違いない。おそらく、アジア出身の人たちが先行者と共に活躍するだろう。
若者に期待しているが、自分も未来を拓く側に参加し続けていたい。