WIRED 2022 Vol.44 Web3 - 所有と信頼のゆくえ

hagi に投稿

Web3はWeb2.0の続きとは私は思わない。まあ、Web2.0がビジネスの統合で、Web3が社会基盤の置き換えと考えれば進化の形と捉えることもできる。一部ではバブルの様相を呈しているが、本質的な影響が出るまでにまだ数年かかるだろうし、社会の変化が目に見えるようになるまでにはまだ10年程度かかりそうだが、そろそろ眺めておくのに良い時期は来たのではないかと思う。

Web3、あるいは所有と信頼のゆくえ:雑誌『WIRED』日本版VOL.44の発売に際して、編集長から読者の皆さんへという記事を見て、久しぶりに紙の本・雑誌を購入した。WIREDはいつも難解で、しばしば知識人的な上から目線が鼻につく雑誌なので、私は必ずしも好感をもっているわけではないが、時々すごいことが書いてある。今回引用されているが、2010年のThe Web Is Dead.という記事は大きく話題になった。Web誕生から20年で一度は上がったネットワークトラフィックの占有率が23%まで低下した絵がついている。あれから12年。Web3という言葉とともに紹介されているLess Trust, More Truthという言葉が強烈に響く。いろいろな和訳の可能性があるが私は「信仰より事実重視」と訳したい。

ちょうど真ん中の部分に「変貌する世界を見据える100のキーワード」が入っていて、おぼろげな理解を含めて22しかわからず、78は(意味がなさそうに思えるものも多かったが)勉強になった。100のキーワードを挙げるには、まだちょっと早いのではないかと感じた。

提唱者のGavin Woodへのインタビューは必見だと思う。誰か=人、企業、国家などを信頼しなければならない状態ではなく、系を透明化することで人に依存しない世界を作るという思想だと理解している。もちろん、人を信頼しないと生きてはいけない。しかし、誰かが言うことを信じるというのが盲目的であってはいけない。人気のある人も過ちは犯す。TruthとFactは必ずしも同じものではないが、せめてFactチェックは行いたい。しかし、Factチェックを行うためには、Factチェックを行う人を信頼しないといけない。もちろん科学も万能からは程遠く、精度が高まると多くの場合で説明がつかない事象が見つかる。まあ、見果てぬ夢と言ってよいが、決定性のあるアルゴリズムで記述できる範囲はそれで判断するのが適当だろう。

落合 渉悟の「22世紀の民主制」も面白かった。関連してTEDのスピーチを見たが、非常にわかりやすい。私は方向性として良いと思う。今の年長者の常識からは遠いが、多分、デジタルネイティブには受け入れられるだろう。

「"クリプト"をめるぐ4つの概念図」にも刺激をもらった。私は、匿名発言には否定的な立場だが、実名だとバイアスがかかるのは現実。Web3ではWalletがIdentityになる。本当に匿名性を確保できるのかという議論はあるが、複数のIdentityを使いまわしていく未来は来るだろう。単なる技術としてWeb3を見ればそれだけのことだが、次世代の社会基盤として見ると、現実社会とWeb3をどう関連付けるかは極めて重要な課題となる。

一連の記事を読んで、ヒッピー的な胡散臭さが強烈に臭った。大半は徒花となるだろうが、恐らく価値観が変動しつつあるのだと思う。今回のウクライナ侵攻は時代の切り替わりを早める方向に動くのではないかと思わされた。

※画像はwikimediaから引用したEthereumのロゴ