EUROはデジタル通貨のプロトタイプか?

2020年10月22日に「PayPal、ビットコインなどの仮想通貨に対応。まずは米国内から」という記事が出た。この動きにに対して、中銀の行方を絡めた記事も出ている。「ペイパルのもたらす衝撃、仮想通貨新時代」(2020年10月29日)では、「各国中央銀行が金融の秩序を維持するため」にデジタル通貨は日の目を見ることができないでいるが、時間の問題という見解が示されている。coinpost.jpの記事もある。

しかし、EUROは国家の中銀の権利を放棄したことで生まれたものだ。規模がなければ、中銀が機能しないことを認識して、自国の金融政策を放棄しても価値があると考えたということだろう。北欧のノルウェーとスウェーデンは小国だが今もEUROを採用していない。しかし、スウェーデンは私が知る限り、キャッシュレス世界一だと思う。キャッシュレスが進めば、デジタル通貨とクレジットカードは互換で実利的に有利な方が採択される。恐らく、しばらくすればクローネは意味を持たなくなるだろう。しかし、中銀は金融政策の実施権を放棄しない。機能するか否かは分からない。

恐らく、「住所とは何か」という質問と深く関係している。私が普段利用している金融機関は日本のものを除くと3つ。北米のcitibankとリトアニアのpaysera、もう一つはtransferwiseである。citibank(citicard)とtransferwiseはその国の住所を必要とするが、payseraはリトアニアの住所を必要としない。住所の機能の一つは、課税根拠だと思う。ただ、口座が特定できれば、住所がなくても課税は可能である。だから、銀行ではないfintechのpayseraは住所を必要としない。しかし、為替を扱うときには属地性から自由になれない。だから、transferwiseは住所から自由にはなれないでいる。また、fintechに関わらず、金融機関は政府や中銀の支配を鬱陶しいと考えるのは(是非はともかく)自然なことだ。

やがて通貨は国から独立するだろう。一方で、インフラを維持するためには課税は避けられない。host countyの選定条件の一つに公共サービスの効率性、持続性が問われる時期が来ているのだと思う。e-residencyはその一つの解の提案と考えてよいだろう。

EUROはまだ欧州中銀の支配下にあるから、デジタル通貨のプロトタイプとしての検討上の価値はあるが、恐らく一過性の通貨になるだろうと私は考える。もちろん、それはEUROが無価値になることを意味しない。

画像は、coiinpost.jpの記事から引用させていただいたもの。

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