チャットツールのWebサイト(Drupal)インテグレーション

故あって、Drupalサイトへのチャットツールの組み込みを調査した。結論から言えば、組み込みは簡単にできる。しかも、条件が整えば無償だし、商用で有償サービスを利用しても、恐らく元は取れるだろう。ただし、技術的に容易に組み込みが可能ということと、ビジネスでチャットツールをどう使い、どう位置づけるかは別の問題であることもわかった。この記事では、最初に「別問題」と思った背景に触れて、その後に技術的な話をする。

私が、初めてWebサイトでチャットを使ったのは何だったか思い出せないが、多分英語でサポートを得る必要があるときだったのではないかと思う。コールセンターにつながるまでに長く待つのも嫌だし、つながった後に英語の(相互)聞き取りに苦しむと悲しくなるし、用が足せないこともあるから、チャットの方がマシだと思ったからだ。今は、言語に関わらず、どちらかと言えば、コールセンターにつなぐ方を好むが、チャットツールはチャットツールの良さがある。URLリンクを正確に伝えたり、選択質問などは、口頭でやり取りするより遥かに優れている。

ビジネスの世界では、Webサイトがシングルチャネルとなるケースは稀で、実店舗とのマルチチャネルとなるケースは多い。また、Webサイトだけで商売を回している場合でも、電話サポートがあったり、対面で商談を進めるケースもある。ちょっと引いてみると、実はオムニチャネル問題であることに気づく。物販の世界であれば、Webを利用した直販や、Amazon等での外部Webでの販売、コンビニ受け取りなど様々な関係があり、本質的な顧客との関係を考えた方が良い。一方で、自分の嗜好や個人情報を知られたくない人はいるし、開示する決断をしたら、どのチャネルを使っても提供した情報を余すところなく使って最良の経験を与えてほしいと思う人もいる。

私の知る限り日本のAmazonはチャットツールが表には出ていないが、もしチャットツールが出てくるとすれば、それは該当ページの販売者のチャットが良いのか、それともAmazonのチャットが望ましいのかを考えてみるとよい。私個人で考えたとき、信頼しているメーカーの商品を購入している最中なら、そのメーカーのチャットに接続したいと思うし、知らないメーカーだったりする場合なら、Amazonのチャネルを使って聞きたいと思う。Webサイトインテグレーションを考えると、どちらのチャットもサポートすればよいのだが、それでサイトのUIが複雑化してユーザー体験が下がるのは避けたい。

とりあえず、オムニチャネル問題提起はここまでにしておく。

技術の話で考えると、私がまず参照したのは、WordPressに簡単実装!おすすめチャットツールプラグイン6選という記事である。Drupalは優れたCMSだが、CMSのマーケットではWordPressは圧倒的トップシェアなので、調べごとをする時はWordPressの記事が有効である。この記事を読むと、最初に出てくるのがZendexsk chatで2つ目がTidio Live Chatだ。その後に、さらに4つのチャットツールが紹介されている。次に行ったのは「chat tool comparison zendesk tidio」で検索。日本語のページで取り上げられているものを含む比較情報の検索である。いくつか見ていくと比較チャートが出てきた。

https://www.softwareadvice.com/live-chat/?avg_rating=4#top-products chat tool comparison zendesk tidio

これを見ると、Zendeskは、満足度はやや低く、Tidioと使いやすさ(ベンダー視点)では互角であることが分かる。

Zendeskのシェアが世界一と考えて良いことも別途調べ、日本語対応のことを考えれば、とりあえずまずはこの2つのツールを比較すれば良いだろうと思うようになった。

次は、トライアルだ。早速、Zendesk chatとTidioのトライアルを申し込んだ。Tidioのトライアルは英語で行うことになるが、サイトで登録するとすぐ使用開始となった。7日間の試用で、操作に従って設定していくとあっという間に設定が可能になった。

tidio setup

通常のコンテンツでもブロックでも良いが、コードを貼り付ければ、もうその瞬間にチャットツールが組み込まれる(ページ名称がZendeskになっているのは、Zendeskの調査を先にするつもりだった名残)。

Tidio enabled page
Tidio activated

本当にあっという間だった。すでに7日間の試用期間が過ぎてしまったので、その時の画面を再現することはできないが、チャットの操作感もコード参照も非常に快適で何の問題はなかった。

一方のZendeskは、次の平日になって承認されて、接続が可能となった。こちらの試用期間は2週間。

Zendesk console

Zebdeskのコンソールは、日本語で機能的にはほとんどTidioと変わらないが、やはり使いやすい。ウィジェットのリンクをたどると1クリックでTidioと同様のコードのコピーが可能なページに飛ぶ。組み込み方法も変わらないし、そのページに行ったときの操作感はほとんど同じだ。

ただ、違いもある。最大の違いは、スクリプトがTidioではページやサイトごとに挙動を変えられるように複数の公開キーで生成されるのに対して、Zendeskではスクリプトは一つだけである。ビジネスモデルに戻って考えると、Zendeskの世界観はオムニチャネルを実現しようと思うなら、一つで良いはずということになるし、Tidioはサイトやページ毎に対応者を変えたり内容を変えられるように設定しているのでオムニチャネル考慮は別の仕組みでやってくれという主張に見えている。実際、TidioはZendeskでオムニチャネルを実現するための連携機能を提供している。ある種清々しいまでのオープン性である。

実際にチャットツールを使うときには、Zendesk、Tidioのどちらが優れているというふうに考えるのは恐らく適切ではない。むしろ、自分がやりたいことにどちらの、あるいは組み合わせて使うかを考えるほうが合理的である。ただ、選択肢が増えると決断しなければいけないことも増えて面倒である。コンサルタントの力を借りても良いし、自分で調べても良いし、サイコロを振っても良い。

エンジニア的にはTidioのアプローチを好感するが、もし英語力がもう少し低かったら、Zendesk以外の選択肢はなかったと思う。

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