テレワークとサードワークプレース、そしてABW

hagi2020/02/05(水) - 15:06 に投稿

営業所等拠点オフィスの意義を考えていると改めてABWの事を考えさせられる。

私が最初にRegusを知ったのは、インドの会社が日本の拠点として利用していたからだった事をふと思い出した。そのビルに行ったら、会社名が出ていなくて不審に思いつつ、指定されたフロアに行ったら、Regusがあった。その中の小さな部屋が、そのインドの会社の日本拠点だった。シェアオフィスを意識するようになったのは、ずっと後だ。

確かに、海外にオフィスを出そうと思ったらRegusのようなサービスは非常に便利だ。ネットも電源も様々なサービスも準備されているから、身一つで行ってもすぐに開所できる。ただ、それが国内拠点でも使えるという想像には即座には結びつかなかった。会社は事務所を自分で借りて整備するものと思い込んでいたからだ。自分にかかった呪い(呪縛)は中々解けないのだ。

いくら安くても事務所を借りれば結構なお金もかかるし、整備も大変、掃除や衛生管理など本来やらなければならないことは多い。中には、事業が縮小モードになって、かつて何人も要員がいた営業所に1人しかいないという事態になるケースもある。維持費も負担になるので、在宅テレワークに切り替えている事例も耳にする。

ところが、企業には就業規則という重大な規約があり、出社を前提に従業員を管理するシステムになっている。だから、本社側(管理側)の人は、どうやってテレワーカーを管理すれば良いのかと頭を悩ませることになる。テレワーク関連のコンサルティングをやっていると必ず聞かれる質問が「どうやってテレワークで働く従業員の勤怠管理をやれば良いのでしょうか?」である。

これも常識の呪縛である。オフィスとは何かを考えていると、住所が必要な場合、倉庫が必要な場合、ネットワークが必要だとか、金庫がいるとか、電話がいるとか、企業によって必要な機能は様々だが、少なくとも少人数の営業所では、機能的にシェアオフィスで困ることは無い。しかも、その気になって考えると、その営業所に必要な機能は大抵本社への集約やアウトソーシングで現状より小さくする事ができる。営業所は自分で借りて開設するものと言う常識の呪縛から解き放たれれば、もっと合理的で生産性の高い構成を考える事ができる。

同じように、出勤、退勤という概念もオフィスが働く場所という呪縛に引きずられた常識に過ぎない。執務場所は、本来は、誰かと、あるいは、何かの設備に結び付いた業務タスク(Activity)を遂行する時に限って制約条件となるものだ。実際、テレワークに慣れて、その事実に気が付いた人は、どうやれば短時間で多くの成果を上げられるかを考えるようになる。そういう風に考えて、従来オフィスで8時間かけてやっていた仕事、従業員視点では往復通勤時間2時間を加えて会社に捧げる10時間でやっていた仕事が4時間でできたら、その4時間の対価は従来の8時間勤務の対価と本来等価だと感じるようになる。しかし、管理者視点だと、8時間の対価を支払っていると思い、後4時間分従業員から成果を搾り取る権利があるから、その4時間の対価は、オフィス8時間勤務の人の半分で良いと考える。

実際にテレワークにまじめに取り組んだ人は、その4時間の消耗度は8時間並みであることを知っている。テレワークで行う仕事の大半は、一人で行う集中作業だから、根を詰めてやったら疲れも半端ない。その4時間の成果を評価できない上司は無能に見えても少しもおかしくない。ただ、現実は現実でそんな上司でも、その意向に沿わなければ生きていけないのである。でなければ、職を変えるしかない。

また、テレワークで一人で行う集中作業は、納期を守れば、いつどこでやるかは関係ない。早起きして朝飯前にかたずけようが、深夜に家族が寝静まった環境で集中して短時間で仕上げようが、結果は結果だ。「ちょっといいですか」攻撃にさらされるオフィスで集中力を削がれながら長時間をかけてやるのと何が違うというのだろうか。それは、仕事はオフィスでやるものだという呪縛に支配されていることにほかならない。

ABWは、その呪縛から自由になってもう一度考えてみようという考え方だ。結果を生むための執務をActivityと呼び、Activityに注目して働くからActivity Based Workingである。そのActivityを効率的にやって品質を上げるにはどうしたら良いのかを考えて楽に成果を出そうじゃないかという、ちょっと引いて見ればごく当たり前の考え方だ。敵は凝り固まった常識による呪縛である。

営業の業務を考えると、顧客訪問やそのための準備、訪問後の作業などのActivityがある。顧客訪問は相手のあるActivityだから場所と時間が拘束されるが、他のActivityは場所も時間も関係ないはずである。情報システムがオフィスにいかないと使えないのであれば、それは場所を拘束するActivityとなる。また、営業成果に直結しなくても、製造に関わる人との情報交換とか、同僚との情報交換は重要なActivityであり、相手と時間を共有しなければいけない。一方、生活者の視点で見ると、育児や介護、家事や様々な時間や場所に縛られるPersonal Activityがある。もちろん、睡眠や食事は重要なPersonal Activityだ。企業で稼ぎながら生きていくという事は、企業のActivityとPersonal Activityを両立させながら生きるという事になる。

育児期間等、Personal Activityの制約が厳しい人は、9時から5時を企業Activity専用時間、場所はオフィスにいなければならない状態で、それ以外の時間でPersonal Activityをこなすことはできない。何とかしようと思えば、その時間と場所の制約を緩くしてもらって、可能であればモザイク状に埋め込んで、企業ActivityでもPersonal Activityでも期待通りの成果をだすことになる。常識の呪縛を解けば、やれる。

型も大事だと思う。人にもよるだろうが、「9時から5時を企業Activity専用時間、場所はオフィス」形態だと仕事のやり方を早く覚えられるかも知れないし、そういう働き方でお互いに高めあえるケースもあるだろう。ただ、型は型でしかない。型を守ることに執着して、本来出せるパフォーマンスを失わせるのは馬鹿げている。

テレワークを上手に使いこなしている人は、意識してか否かは別にして、ABWを遂行しているのである。見習うべき働き方であって、例外扱いをして差別するような対象ではありえない。むしろ、彼女、彼らからActivity(のクラス)を拾い出し、そのActivityを実行する人に望ましい環境を準備するのが、本社側、管理側の責任だと思うのである。もちろん、コストも含めて合理的な判断をしていかなければならない。

スタートアップは、形式にこだわっていてはすぐにつぶれてしまう。だから、呪縛は小さい。しかし、大企業や歴史のある企業には伝統という呪いがかかっている。その呪いを解いて、次の段階に進めば、拓ける未来もあると思う。執務場所と執務時間に関する呪いを解いて社会貢献したい。

「テレワークは在宅」という思い込みはオフィスという場所の呪い。出勤、退勤という常識は時間の呪い。ABWは企業と従業員にかかった呪いを解く魔法である。

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