サードワークプレースはどこまで伸びるか

hagi2019/10/17(木) - 09:02 に投稿

WeWorkの破たん懸念が報道されているが、広義のコワーキングスペースは伸び続けていて、オフィス不動産の構造転換は引き続き進むと考えて良いだろう。並行して、ワークスタイル、ライフスタイルは流動性が高まる方向に大きく変わって行く。

WeWorkのマンハッタンにおけるオフィス不動産の占有率は1%を少し上回る程度(5.3百万SQFT/450百万SQFT)。これはすごい値で、あの狭いマンハッタンに東京ドーム約10個分のオフィススペースを借りていることになる。マンハッタンだと一つのブロックに100フロア以上はオフィスフロアがあるので、ブロックごとにWeWorkがある換算、本当にそこら中WeWorkだらけという感じである。アメリカの一人当たりオフィススペースは182SQFTなので、約3万席相当となる。東京の平均面積で考えると4万席弱相当(体の大きさが違う?)。もし、コワーキングがオフィス面積の25%を占めるようになり、1%を超えるブランドが5以上になって競争が起きれば、世界は劇的に変化するだろう。

WeWorkのビジネスモデルに持続性が無いという意見、Coworkingとは言えないという意見はもっともだと思っている。私も、持続性を懸念しているが、一定の品質が満たされるサードワークプレースが至る所で利用できるという利便性は明らかに革命的なものだ。

WeWorkはシェアオフィスサービスの提供者でもあり、オープンスペースも提供するので、ハイブリッド型コワーキングスペースと呼ばれる事がある。運営者次第だが、オープンスペースはコワーキングスペース(Community coworking)として機能し得る。

ドトールだって、近くにある同じドトールでもこの店は居心地がよくてこの店は何となく行く気がしないということがあるように運営者次第で、このWeWorkは自分のホームスペースで、同じスペースにいるCoworkerは仲間だという関係は育つ。WeWorkは優秀な運営者の引き抜きに熱心で、WeWorkの経営はCommunityの重要性を認識していないわけではない。

オフィスサービスにも規模の経済は効くように思われるので、もしWeWorkが破たんしたとしても別の業者が出て来るに違いない。

一般に人はそれほど移動しない。移動の多い人も、移動が好きな人はいるが、移動には高いコストがかかる。長い通勤は苦痛だし、出張も基本的には一時的な旅行と違う非日常である。日常に近い形でワークプレースを考えると、ホームワークプレースはポンポンと変えられるものではない。ざっくり言えば、通常オフィス(1st Workplace)、自宅(2nd Workplace)、常用サードワークプレース、その他のワークプレースという形になる。常用サードワークプレースの非常に有望な候補が良質なCommunity coworking spaceとなる。良質なスペースが見つかれば、自宅をワークプレースとして利用する時間は短くなるだろう。出張時などに使うその他のワークプレースは、どうしてもセットアップに時間がかかる。旅の達人もいるようにサードワークプレースを上手に使いこなすノマドも存在するだろうが、旅の機会の少ない人は同じような行動はとれない。ただ、常用サードワークプレースでWeWorkを使っている人なら、他のWeWorkに行ってもオーバーヘッドは小さい。便利である。至る所にあるWeWorkは移動のコストを下げる。

WeWorkは高価なので誰にでも手の届くようなサービスではないが、やがて価格破壊的なサービスを提供するWeWorkのようなサービスプロバイダーが出現するだろう。ドトールは地元の喫茶店を追い詰めたが、生き残った地元の喫茶店の質は上がり、利用者のQOLは向上したと思う。今後10年でグローバルブランドとローカルブランドあるいは単立ブランドが適当な均衡点に落ち着いていくに違いない。

視点を変えて、企業サイドから見ると、固定オフィス比率は下げざるをえない。よほどの大企業なら、オフィスの品質を自力で高く保つことはできるかも知れないが、規模のあるサービスプロバイダーと伍していくことは困難だ。恐らく、9割以上の企業はオフィスサービスプロバイダーのサービスを利用する方が合理的になるだろう。

オフィスワーカーサイドから見ると、自分のワークスタイルのデザインが重要になる。自分の生産性をどうやって極大化するか真剣に考えざるを得ない。今は、先行する企業がNewwork等との契約を結んでタッチダウンオフィスの利用を進めているが、恐らく常用サードワークプレースは自分で選ぶようになるだろう。住居はそうそう移さないように、常用サードワークプレースも数年は固定的に使う場所になるはずだ。それを通じてコワーキングは再考され、今認知していない人たちにもCommunity coworkingの意味が伝わって行くだろう。常用サードワークプレースは決して仕事をするだけの場所ではありえない。日頃過ごす場所で人間関係を遮断し続けることは現実的ではないのである。

さらに住居もサービス化は進む。OYOが世界中で成功するかはまだ分からないが、家具付き住居サービスが進めば、住居移転のコストも下がる。ストレージサービスと併用すれば、ほとんど着のみ着のまま移動できるようになる。そういうサービスをさらにサードワークプレースサービスと併用すれば、独身の人なら、例えば、3か月静岡あたりに住んでみようというのは絵空事ではなくなる。家族の在り方にも影響を与えて行くだろう。同じところに住み続けることは愛着を生み、飽きも生む。昔の別荘暮らしではないが、夏は北海道に住み、冬は沖縄に住むのだって現実的な選択肢になっていくだろう。EU市民なら、それは国もまたぐ。平和的に一緒に過ごす時間が増えれば、出自に関わりなく同じ人間であることを感じられるだろう。

個人差はあるだろうが、一人の人間が良好な友人関係を維持できる人数はそれほど多くは無い。距離が離れれば関係は薄れるが、会えば復活するケースもある。年に1度しか会わない関係でも10年続けば忘れない間柄に育つ。私には、多様な友人関係をもっている人生は豊かなように感じられる。

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