1619年プロジェクト(上)読了。日経の書評『1619年プロジェクト(上・下)』ニコール・ハナ=ジョーンズ編著を読んで読もうと思った本である。私にとってはとても刺激的な書籍で、下巻を読む日が待ち遠しい。トランプが出版禁止を呼びかけるのも当然で、実際に教育機関が取り上げることを禁止している地域もあるようだ。
New York Times Magazineの公式Webサイトは健在。
アイデンティポリティクスの危険性は過小評価すべきではないが、圧倒的な事実論証と憲法改正の経緯の記述は大きな驚きであった。ニューヨークに住んでいた時には、人種の坩堝感は感じていたが、私が差別感を感じることなく過ごせたのは、黒人活動家のおかげであると思えたのも収穫だった。
最初は読み飛ばすように読んだが、序文の
その船は信じられない物語を携えて大嵐の中からやって来た。(中略)有名なメイフラワー号の到着の一年前に、ジョージ・ワシントン誕生の113年前に、奴隷解放宣言への署名の244年前に、船はヴァージニア植民地ジェームズタウンに入港し、歴史の泥水の中に錨を降ろした。この「オランダ国王勅許の私掠船」が普通の船では決してなかったことは、これを出迎えた人々にとって明らかだった。今日、我々が異常だと思うことは、この船がどれほど異常なのかを正確に悟った人々が全くいなかったことだった。というのは、後にも先にも、これほど重要な積荷を降ろした船はほとんどなかったからだ。
はBefore the Mayflower: A History of the Negro in Americaの一節らしい。私は全くこの話を知らなかったが、恐らく史実だろう。
この本の主張に従って読むと、アメリカでの憲法改正が人権の確立を目指したものであることがわかる。そして、それを先取りした人たちが日本の憲法策定と関わってきたということだろう。日本の憲法改定論者は明らかに逆方向 - Trump的 - なもので、その危険性を軽視してはいけない。自由は、差別的扇動によるポピュリズムによって奪われるのだ。
一方で、アメリカが奴隷制の長い維持と搾取によって成長したこと、欧州の多くの国が植民地支配と搾取によって繁栄を得たことについて考えさせられる。日本の為政者は良くも悪くも欧米から学んだが、既にそういう時代は過ぎていたことに気がつけなかったわけだ。同じ過ちを繰り返してはいけない。
それでも、イギリス(England)の集積した知、ハーバード大が集積した知は、仮に搾取した財によって築かれたものだとしても、知自身を否定してはいけない。
The 1619 Projectも、その搾取した財がなければ実現しなかっただろう。アイロニーを感じるが、その成果を否定できない。