LocalGov Drupal

最近、大分サボっていた最近リリースされたモジュール一覧を見ていたら、LocalGov Step-by-step、LocalGov ServicesなどLocalGovが名前につくモジュールがたくさん出てきた。

調べてみると、LocalGov DrupalはUKで50以上の自治体で利用されているオープンソースプロジェクトだった。ベースとなるLocalGov Drupalのプロジェクトページを見ると、スクリーンキャプチャ2枚目が想定される自治体のページとなっている。出生届、婚姻届、住民票請求などが機能として提供されている(以下の画像はプロジェクトページから引用したもの)。

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ちなみに、私が住んでいる文京区のページだと、トップページに「くらしの手続きガイド」というメニューがあり、このさきがある。

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これをクリックすると以下の画面が出てくる。

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何か「どこの窓口へ行って、どの書類を提出するのか。必要な持ち物はなにかがとても複雑です」っていう時点で、日本終わってるじゃんという絶望感があった。

ちなみに、私はエストニアのe-residentなので、そのポータルにログインするとこんな感じ。Citizenではないのでほとんどの機能は使えないが、デジタルで完結可能なことはすぐわかる。

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それはさておき自治体が、オープンソースを使って支出を低減させつつサービス向上を図っているのがすごい。このプロジェクトの活動母体はLocalGov Drupalとしてdrupal.orgにも登録されている。しかも、DrupalCamp England 2025のスポンサーにも名前を連ねているのである。

実際に、もし日本で行政手続の自動化を進めようと思ったら、すごい費用が必要となりそうだし、制度にも手を入れないといけないだろう。マイナポータルで一括してやれれば良いかもしれないが、その時文京区でその業務を担当している職員はどうなるのだろうとか考え始めると、政治家が二の足を踏むのは想像に難くない。それはUKでも変わらないだろう。2020年からの活動なのだが、どうやって資金を集めて、どう営業して今日の状態まで持ってきたのだろうか。また50自治体という数の少なさも気になるところでもある。

オープンソースプロジェクトをどう活用するかは政治課題でもある。ベースとなるプロジェクトを何とか成功させて、各自治体がサービスプロバイダーの手を借りるなりして優先順位の高い順にシステムを完成させることができれば、良いのになあと思うのである。

インテグレータに依存してしまうユーザーにはこういう挑戦はできない。オープンソースプロジェクトはユーザー教育に力を入れる必要がある。まあ、当初は有力インテグレータが金を出し、その成果を享受しようという流れになってしまうのだろうが、今の時代、透明性の高い競争環境が保証されているので中小にだって十分チャンスは回ってくる。そして、一度契約したらずっとOKという時代もかなり過去のものになった。インテグレータに限らず高い技術をもったプレーヤーがすごいプロジェクトをやり遂げたとしても、その後、その地位を維持するのは難しい。各自、自分の強みで勝負しつつ他のプレーヤーとの連携を高めていくしか無いのである。社会的視点で考えれば、デジタル公共財の厚みを増していく方向で取り組む以外の道はない。ケチ臭いことを言っていると長くは生き残れないのだ。

今後LocalGov Drupalのような動きが、世界中で起こり、DrupalConのような機会に各国が競い合って発表し、場合によってはマルチナショナル化が進んだら素晴らしいと思うのだ。この分野でDrupalがベストプラットホームとなるかはわからないが、かなり良い位置につけていると思う。

蛇足になるが、AIの影響は激しく、Drupalコミュニティも浮足立っている感じもある。パパっとAIでシステムが作れるようになったらDrupalもいらなくなるんじゃないかと心配している人もいるだろう。しかし、一過性のものならともかく、長く使うものには丁寧な仕事が必要になる。もちろんAIの力を借りることになるのは間違いないだろうが、ショートカットを指向するより、腰を据えた取り組みが望ましいと思う。

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