今週も福音のヒントに学ぼうと思っていたが、23日(金)になっても記事が掲載されていなかったので、『教会暦と聖書朗読 2026年度』に従う(24日には年間第30主日 (2026/10/25 マタイ22章34-40節)が掲載された)
10 月 25 日 (日・主・緑) 年間第 30 主日 栄 信 <祈 464 叙 224~>
[Ⅰ] 出エジプト 22・20–26 主は言われる。…
[答] 64(1)(3)(6) (詩編 18・3,23+25,47+50)
[Ⅱ] 一テサロニケ 1・5c–10 皆さん、わたしたちが…
[ア] 273 (30A)(ヨハネ 14・23)
[福] マタイ 22・34–40 そのとき、…
今日の箇所は「年間第30主日(2026/10/25 マタイ22章34-40節)」。3年前の記事がある。マルコ伝12章に並行個所がある。
34 ファリサイ派の人々は、イエスがサドカイ派の人々を言い込められたと聞いて、一緒に集まった。35 そのうちの一人、律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。36 「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。」37 イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』38 これが最も重要な第一の掟である。39 第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』40 律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」
なぜかルカ伝に並行個所がない。
37節は申命記6:5「あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。」の引用で、70人訳とピッタリではないが多くの単語が重なっている。マルコ伝12:30では「…思いを尽くして、力を尽くして、…」となっている。39節はレビ記19:18「復讐してはならない。民の人々に恨みを抱いてはならない。自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。私は主である。」の引用。
ちなみにBSBでは「Jesus declared, “‘Love the Lord your God with all your heart and with all your soul and with all your mind.'」と訳されている。heart, soul, mindは区別の難しい。力を尽くしてで用いられるのはstrengthという単語。感覚的には、力を尽くしてより、長所を活かしてというイメージ。熱く、深く、知力を尽くし、長所を用いてという感じだろうか。
申命記のその箇所の後8節に「更に、これをしるしとして自分の手に結び、覚えとして額に付け、」と書かれていて、Tefillinに納められるようになった。出エジプト記2個所、申命記2個所の内の1つ。ユダヤ人であれば、誰でも知っている個所だろう。出エジプトの神を忘れてはならない、その神に仕え、子孫にそれを教えなければいけないといった内容で、ちょっと大日本帝国憲法「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」を想起させる。イスラエルの建国の期限を出エジプトに求め、申命記の記述は教育勅語に似ていると言えなくもない。明治神宮の口語文訳では「そして全国民が、国家と家庭のために心を合わせて力を尽くし、今日に至るまで美事な成果をあげてくることができたのは、わが日本のすぐれた国柄のおかげであり、またわが国の教育の基づくところも、ここにあるのだと思います」と書かれている。「聞け、イスラエルよ、主(YHWH)は私たちの神、主はただ一人。」は排他的な権力者が利用すれば、極めて邪悪になり、イエスが説けばTefillinに納められたところではなくレビ記の「復讐してはならない。民の人々に恨みを抱いてはならない。自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。私は主である。」が神の思いとなる。「律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている」という宣言は極めて重い。
第一の掟は自明といって良いが、「自分自身を愛するように隣人を愛しなさい」を第一の教えと同等とすれば、力を尽くして(長所を活かして)隣人を愛せということが、第一の掟の本質ということになる。平等の思想と言って良いだろう。体力、知力や統治能力も力の一つであって、貴賤はないという伝統的価値観の転換を意味している。
教育勅語は、「国民の皆さん、私たちの祖先は、国を建て初めた時から、道義道徳を大切にする、という大きな理想を掲げてきました」で始まるが、激烈な競争と殺し合いの結果、現在の体制が確立されたというのが現実で、理想を掲げて来なかったわけではないが、「皆さんの祖先たちが昔から守り伝えてきた日本的な美徳」は幻想に過ぎない。素晴らしかった過去を取り戻すなどというメッセージは扇動に過ぎない。イエスの時代の律法の専門家もモーセの時代の正しい姿を現在に実現するという考え方に立っていたと思われる。イエスは未来志向と言える。現実を無視できないが、今より明日のほうがより隣人愛に満ちた社会になるように権力者に丸め込まれることなく良い人生を送るべしと言っている。伝統を尊重しつつも、人の道は時代とともに進化していくのが望ましい。
今日の個所は第二の部分を組み合わせていることこそが本質だと思う。「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、隣人を愛しなさい。それこそが、あなたの神、主を愛することにほかならない。」
※Tefillin経由でたどり着いたWikimedia commons - Jew_in_Podolsk。額の箱がテフィリン。