遠野物語 全訳注

遠野物語 全訳注』読了。初めて読んだ感想は、全体としてはこんな伝承があったのかといったものだった。一方、訳者新谷尚紀氏の注釈には興味深いものが多かった。一番気になったのはアイヌとの関係に関わる部分で、これについては、『#3 不可思議な世界を「現在の事実」として描いた『遠野物語』—石井正己さんが読む、柳田国男『遠野物語』【NHK100分de名著ブックス一挙公開】』でも触れられている。


『遠野物語』本文の頭注には、「遠野郷のトーはもとアイヌ語の湖という語より出でたるなるべし」「ヤチはアイヌ語にて湿地の義なり 内地に多くある地名なり」等々、遠野の地名をアイヌ語起源によって説明する記述が頻繁に見られます


遠野郷は現在の岩手県だから、北海道からは近くない。でも、異なる民が住んでいた可能性は否定できない。Wikipediaのアイヌでは、「「遠野物語」に登場する「山人(ヤマヒト)」をアイヌと捉える向きもあったが、アイヌと古代の蝦夷との関連については未だに定説はなく」と書かれている。事実はどうだったのだろうか。

注釈の中で面白いと思ったのは、109(P244)についていた道祖神等に関するもので必ずしも109と直結している話ではないが、神の人形として残されているものの地域的な広がりや類似性、相違性は伝承を読む上で参考になる。

不思議な話ばかり。また、どこかで聞いたことのあるような話が少なくない。ホラ話として切り捨てても良い気はするが、ザシキワラシなどは、見える見えないは別にして運の流れを感じたことのない人はほとんどいないだろうから、それを可視化した伝承と考えれば自然に感じられなくもない。人の力でどうにもならないものへの恐れは現代でも無視できない。

かつて栄えたと思われる廃墟を訪れるような感覚を味わうことができる。

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