善の研究

善の研究を読んだ。遠い昔に読んだ気がするが、記憶に残っていない。

100年以上前の本で、青空文庫にもあるが、ワイド版の解説は読み応えがあってよかった。出版された1911年は明治44年。まだ、オスマン帝国が存在していた頃で、イタリア・トルコ戦争が勃発した年でもある。善の12章で「今日はなお武装的平和の時代である。」と時代観が書かれている。善の研究ではイスラム教への言及は見られない(読み落としはあるかもしれない)。ナチス・ドイツも核兵器も出現する前の書籍である。産業革命後とは言え、脳科学を含む自然科学が目覚ましく発展する前でもある。

読み進んでいる間に感じたのは、今の自然科学の知識をもっていれば恐らく全く違った論理展開になっただろうということと、東洋と西洋という対比が底流に感じられる点である。西田幾多郎氏が膨大な文献にあたって、哲学的研究を進めていることは明らかで敬意を感じざるを得ない一方で、今と違って、気軽に外国訪問することもできないことがハードルになっているようにも感じられた。

善とは何か、宗教あるいは神とは何かは、私にとって重要な問いであり、本書の論理展開は参考になったが、残念ながら新たな発見は得られなかった。それでも、読んで良かったというのが素直な感想である。

 

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