新生活226週目 - 「カナでの婚礼」

今週も福音のヒントの箇所から学ぶ。今日の箇所は「年間第2主日 (2025/1/19 ヨハネ2章1-11節)」。3年前の記事がある。並行箇所はない。

福音朗読 ヨハネ2・1-11

 1〔そのとき、〕ガリラヤのカナで婚礼があって、イエスの母がそこにいた。2イエスも、その弟子たちも婚礼に招かれた。3ぶどう酒が足りなくなったので、母がイエスに、「ぶどう酒がなくなりました」と言った。4イエスは母に言われた。「婦人よ、わたしとどんなかかわりがあるのです。わたしの時はまだ来ていません。」5しかし、母は召し使いたちに、「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」と言った。6そこには、ユダヤ人が清めに用いる石の水がめが六つ置いてあった。いずれも二ないし三メトレテス入りのものである。 7イエスが、「水がめに水をいっぱい入れなさい」と言われると、召し使いたちは、かめの縁まで水を満たした。8イエスは、「さあ、それをくんで宴会の世話役のところへ持って行きなさい」と言われた。召し使いたちは運んで行った。9世話役はぶどう酒に変わった水の味見をした。このぶどう酒がどこから来たのか、水をくんだ召し使いたちは知っていたが、世話役は知らなかったので、花婿を呼んで、10言った。「だれでも初めに良いぶどう酒を出し、酔いがまわったころに劣ったものを出すものですが、あなたは良いぶどう酒を今まで取って置かれました。」11イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。


 3年前の記事では、事実関係に言及しているが、それから3年経過してみると、ヨハネ伝は時系列的な事実関係に関しては全く信頼が置けないことを前提に読まなければいけないことは分かっているので、そこには触れない。場所としてのカナ(Κανὰ)という単語はヨハネ伝にしか出てこない。

なお福音のヒントの冒頭に「年間第2主日のミサの福音は、ヨハネ福音書が伝えるイエスの活動の初期の場面です。(中略)なお、A年にはヨハネ1章29-34節、B年にはヨハネ1章35-42節が読まれます」とある。A年は「神の子羊」(洗礼者ヨハネによるイエスの告白で1日目、場所はエルサレムの近郊)、B年は「最初の弟子たち」(2日目)となる。最初の弟子たちの一人がカナのナタナエル(恐らくバルトロマイのこと)とある(1日で約100km移動するのは無理がある)。そして3日目が今日の箇所のカナの婚礼となる。福音のヒント(1)で一つの解釈として「ヨハネはこの6日間の出来事を新しい創造とも呼ぶべき神のみわざがここに始まるという思いで伝えようとしているのかもしれません」と書かれている。いずれにしても、事実がどうだったかというよりは意味を汲み取るべき箇所と言えよう。

意味から考えると11節の「イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。」が象徴的だ。それで、弟子たちはイエスを信じたということは、奇跡で心が動かされたということになるが、なにか胡散臭さを感じる。どう仕込んだのだろうと考えたくなる。一方で、奇跡物語はイエスの神性を証明するものだから、聖書のように大量の読者がいる古典で書かれていれば、きっとそうなのだろうと思わされてしまうことも否定できない。

意図としては、伝道活動を始める前から、識者からは神の子羊と認識されていた(神の子羊)、千里眼を有していた(最初の弟子たち)、奇跡を起こせた(カナでの婚礼)というヨハネ伝の事実を記載していると考えるのが妥当なのではないかと思う。ヨハネ伝には荒野の誘惑の記事がない。共観福音書では洗礼者ヨハネからの受洗後に誘惑に打ち勝って公生涯を歩み始める形になっているのに対して、ヨハネ伝ではイエスは最初から神なのである。全能感があって、その後のイエスの説教が受け入れやすくなる。また磔のシーンは生々しさがない。生々しさがないから、読みやすく、共観福音書より黙示的なイメージも強く、これを読み込めば私も神の秘密に接することができるのではないかと感じされるものがある。

ミサの朗読配分でこのタイミングであえてヨハネ伝のこれらの部分を挟むのは、イエスの神性を最初に確認しておきたいということなのかもしれない。

カナの婚礼に関しては、Wikipedia英語版で詳しく書かれている(Wedding at Cana)。場所の特定などについても触れられていて、恐らく比較的古い時期に廃村になったところと思われる。カナの婚礼の絵画は後世になって想像して書かれたもので、当時の習慣とマッチしていたかはわからない。有力候補Khirbet Qanaの現代の写真は、https://maps.app.goo.gl/L8KgnjoGFk7rVHvj8などで確認することができる。

※冒頭の画像はカナの婚礼の場所の候補を含むガリラヤの地図。Wikimediaから引用