出張の合間に岩国市日の出公園まで散歩した。岩国駅から約3.5km。日本製紙と帝人の工場街の向こう側になる。帝人の名前はもちろん知っていたが、鈴木商店、日商岩井との関係は知らなかった。
ホテルから歩いて日の出公園に至る道からは広大な帝人の敷地が見える。中心部にはかなり古くメンテナンスがされていないように見える工場が見えた。恐らく歴史的な建造物なのだろう。研究所も、新たな建物もあった。この地から日本の衣料を変え、世界の衣料を変えた。その活躍によって日本の民は潤い、生活は向上したのは事実だろう。
歩いていて、大きな工場があるのにちっとも嫌な匂いはなかったのが印象的だった。匂いを感じたのは木の匂いで、日本製紙のパルプの元の匂いかも知れない。製紙工場というと東海道線で富士の辺りを通る時に悪臭があったのを思い出すので、少し距離があるとは言え、悪臭を感じなかったのはすごいことだと思った。
大きな工場には美しさと恐ろしさを感じる。周辺施設を含め多くの人が誇りを持って働き、改善のサイクルが回る。その結果、生産性も環境性能も上がる。手工業にはとても太刀打ちできない凄さがある。しかし、成長が止まり撤退の時期を迎えるとつらい。儲けが減ると維持費の捻出が難しくなる。下手をすると有害物質が流出する可能性もある。原発や石油コンビナートだけでなく、縮退期に向けた片付けるための積立金が無いか、あっても手を付けてしまったら危ないことこの上ない。
岩国は基地の街でもあり、自治体予算は潤沢に感じる。ちょっと訪問しただけで肌感覚として感じるのだから、地元の方にしたら政権交代などあってはならないことだと思う人も多いだろう。これも危ない感じがするが現実なのだと思う。新しい岸のポスターは東京から見ると世襲の礼賛のように見えるが、世襲だろうが何だろうが保守が命だと感じている人には響くかも知れないと思う。
様々な工場設備がダウンサイジングに向かうだろう。恐らく、情報技術の発展で再現性が高まったので、物理施設の大きさの必要性は下がっていく。私は、良い方向の変化で、保守は亡国だと思う。