Coworking Europe Conference2022 初日

hagi に投稿

Coworking Europe Conferenceが開催されている。今年は、アムステルダムで2018年に開催した会場のB.Amsterdamだ。出席者数は、2018年の時と大きく変わらない。見知った顔も多いが、GCUCでよく見る顔が減っている。先日GCUC UKが開かれたことも影響しているのかも知れない。

午前中は開会挨拶、B.Amsterdam紹介と2018年から今に至るまでの経緯が説明された。かなり苦しい思いをしたことが推察されるものの、投資も行って多角化も進め、頑張っている様子が印象に残った。

午前中のセッションは、以下の3件

The flex workspace industry cautious opportunities

James Rankin, Instant Group (London)

Character instead of square meters: Companies today are looking for different offices

Thomas Schulz, co-founder AllOfficeCenters (Frankfurt)

What is the role coworking is going to play in the massive shift towards Hybrid working?

Nir Kelner, CEO of Brain Embassy

Rebecca Nachanakian, General manager for Southern Europe, Benelux & Nordics of WeWork

Krin Poel van der Las, IWG

Emma Swinnerton, Head of Flex Cushman & Wakefield

Moderated by Jean-Yves Huwart, SocialWorkplaces.com

特に印象に残ったのは3件目のパネル。

オフィスレントの需要は堅調だが、内容はいろいろ変化しているのがわかる。IWG(Regus)、WeWorkという国際的オペレータ、Cushmanは不動産、Brain Embassyはオペレータ件不動産事業者。

Brain Embassyは、ワルシャワのスペースを訪問したことがあるが、ちょっと遊園地的な面白さがありつつも、きちんと仕事もできるスペースだったが、オフィスレントも手掛けるしイスラエルでも商売を展開している。メタが大量のオフィスレントを行っていて、Tech Giantsの影響の大きさに言及していた。地域差はあるものの全体的には欧州のオフィス需要は活発で、イケイケ感がある。

オランダでは、Covid後自転車が増えていて、Regusでは駐輪場つきのオフィスの需要が高まっているという話があった。

会場からの質疑への応答で、デスク予約は現在の各社サービスだけでは需要を満たせずUberのように事業者によらないような予約サービスが望ましいという話も出た。また、火水木が混む傾向にあるという話もあった。

昼過ぎだが、ランチ前にもう一つパネルセッションに出席した。

Coworking Expansion. Is becoming a regional champion the best winning strategy?

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複数スペースを拡大しつつある、マドリッドベースのCloudWorksとタリンベースのWorklandの経営者とコンサルタント、モデレータをCoworkieのPauline Rousselがつとめたもので、極めて興味深かった。

Worklandは現在私が利用中のスペースで会議が終わったらまたタリンに戻ってそこで執務する。社長とはCoworking Europeつながりだ。

CloudWorksはファミリービジネスだが、10を超える多拠点展開に成功。最初はフリーランサーやスタートアップを中心に始めたが、徐々に規模の大きな企業を顧客に加え、プライベートオフィスも展開。Worklandはプライベート・エクイティの投資を受けて、バルト三国で多拠点展開。どちらも、新しいスペースを開ける前に事前に顧客を集めている。Worklandは6割埋まるまでは開設しないと言い切っていた。

Coworking Europeも参加し始めた2013年頃とは大分変わって来て、生き残ってきたスペースオーナーは経営者色が強くなっている。コミュニティ指向が失われることはないが、WeWorkなどの参入によってビジネス的に成り立たせるには大手とは違う経営力が求められるようになっている。再開した人からは僭越ながら随分成長されたなと思わされることが多い。

Worklandは銀行の撤退支店のビルに注目していた時期があった。場所がよく、建物の質も良い。リノベをやるとコワーキングスペースに向くのだそうだ。廃教会をコワーキングスペースにしたスペースもあったが、欧州にはそういった遺産的な建物が多くある。結構不便だったりするのだが、良さもあるのだ。

午後は、3つのセッションに出席。

パネル: Technologies to optimise coworking management's processes. What are the latest evolutions and possibilities?

パネル: How to lure more investors into the coworking industry and muscle up the coworking business cases?

Ukraine crisis - Can the network of coworking spaces in Europe mobilize to support Ukraine's refugees, startups and other initiatives ?

最初のパネルはツールベンダーの考え方を示すパネルで、そのパネルを聞いている限りでは、差異はあるものの互角という感じだった。セッション後に3つのツールベンダーのブースを訪問して、それぞれ話しを聞いたが、所謂ソリューションライセンスで、セルフサービスで全部できそうなレベルのツールは存在しない。これから、まだまだ動きがある、強烈な新規参入も出ると思う。ただ、K-BusinesscomのMark氏が、やがてコワーキングスペースという概念は終わり、人と人とのつながりはソフトウェアサービスに移行すると言ったのは興味深かった。

2つ目のパネルは資金調達に関するもので、結構生々しい話も出た。非常に良い関係にあって多額の投資を受けていたエンジェルが亡くなり配偶者が資金の引き上げを強行して弁護士を立てた話とか、数軒の拡大を成功させると資金が寄ってくるが、断れば将来のチャンスが減るし、受ければ実施しないわけにはいかずしんどい思いをした話もあった。その昔とは異なり、資金がつき始めると日本円相当で1億程度は当たり前、2億、3億、10億とつくようになるとそれはそれで悩みは深くなる。低金利時代の終わりと次のリセッションは不可避という認識は皆一致していて、もちろん、詳細には触れないものの、それぞれ対策を考えているのがすごかった。

最後のセッションは、ウクライナのムィコラーイウからリヴィウに避難した女性のスピーチで、夫は戦場に、息子は国外には出られない状況で開戦以来の動きを発表した。

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コワーキングスペースとの関わりがあり、ウクライナのコワーキングスペースは破壊されてしまっていてもサイトは残っていて、そこで会員登録をしたり、設備利用契約を行って支払えばそれがそのまま支援原資とできる。その方法で、世界中のいくつものコワーキングコミュニティがウクライナ支援を行っており、ウクライナのコワーキングコミュニティとの交流も進んでいる。女性は国外に出られるので、欧州のコワーキングスペースが無償で場所を提供し、仕事の獲得支援も行っているのだそうだ。セッションの参加者はあまり多くなかったが、かなりインパクトのある発表だった。昨日、直接彼女とは10分ほど話したが、まとまった資料によるプレゼンには迫力があった。思い出すような場面では言葉がつまり表情も崩れるが、決して芝居ではないと思う。彼女は、本当に「私達は戦う以外の選択肢はない」と思っているのだろう。

3年ぶりのオンサイト開催。人が対面で集まることには大きな魅力がある。でもリスクもある。私はそれを避けるためにリスクを感じる場面ではマスクをしていたが、恐らくマスクをしていた人は5人程度だったと思う。99%とは言わないが、ほぼマスクレスだった。ちょっと怖いが、リスクを取らなければ得られないものはある。自分を含めて皆の無事を祈る。

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