DRUPALCON PRAGUE 2022にオンライン参加した。その中で特に印象に残ったのは、Global Drupal Business Survey: Exclusive Learnings & Insightsだ。やがて録画が公開されるだろうが、警鐘を鳴らすやや暗めの発表だった。
調べてみると、2021年版のサーベイはDrupal Business Survey 2021: Drupal business is flourishingで公開されている。こちらの結論では、Drupalビジネスは堅調で、まだ伸ばせると結んでいる。
Drupalを商売にしている会社の6割以上が慈善団体と非営利団体を顧客にもっている。私の会社でもそうだ。第二は教育分野、第三は政府、ついでメディア(新聞社など)、製薬と健康関連、IT、金融、旅行業、小売、コンサルティング業となっている。冒頭画像のグラフは売上高を示すものではなくDrupalを商売にしている企業がどのような顧客と取引しているかを調査したものである。
この調査結果は、私の直感と一致していて、商売の大きさだと、製薬業が一番大きいのではないかと考えている。高等教育、政府・公共、報道も小さくない。ITが2021年に高まっているのは、コロナでサービスが売れてセルフサービスポータルの需要が高まったのが理由ではないかと考えている。遅れて、小売や旅行業が2022年に伸びてきているのも非対面サービス需要が高まっているせいだろう。
Drupalはハイエンドで受けがよく本格的なサービスポータルや情報発信プラットホームを構築しようと思えば、極めて魅力的で人件費は高くつくが、それを上回る機能的な魅力がある。目を引くようなきらびやかさではWordPressには遠く及ばないが、コンテンツで勝負しなければいけないハイエンド顧客にとって魅力的な候補となることは間違いない。しかし、Win Rateは必ずしも堅調とは言えないという話があった。
引き合いもあって、規模も大きくなっているが、制約の伸びは比較すると弱い。つまり体制が十分でなく価格競争力でも課題があると考えるべきなのだ。日本でもそうだが、Drupal企業はサイズが小さい。20名以下が多くて、100名を超える企業は少ない。ハイエンドマーケットだと、SI企業が取りまとめるか、ユーザー企業がマネジメントできないといけなくなり、大きなシステムの構築需要に答えられていない。
日本でも感じるのは、どのDrupal企業も技術者が確保できないと悲鳴を上げているが、じゃあハイエンドに食い込めているかと言えば私の知る限りでは本当に必要とされる大規模システムでDrupalの潜在力を活かせるようなプロジェクトはあまり多くないように思う。とても残念なことだ。
今回の発表者は、Drupal企業は競合であっても助け合うし、非常に紳士的で良質な技術者でみちみちているが、それだけじゃビジネスの世界で成功できないと考えているように感じられた(英語力不足で誤解はあるかもしれない)。私の感覚に合う。
Drupal企業の規模は20人くらいが自律的な人材成長の観点から見て適切な感じがする。だから、JV的な規模への耐性を保持する仕組みが必要なのだろう。小さな会社が下請けにならなくてもちゃんと食っていけるのが仇になっているとも言える。エストニアでもスウェーデンでもアジアの企業でも似た感じがする。
アメリカはオバマ政権時代にDrupalをうまく使ったので、得られた恩恵も大きかったが、トランプ時代にWordPress化してしまった。それでも一定の軌道には打ち上がったので、悪くない状態にあるのだがDrupalの有する社会を変える力を発揮するほどの活力は残念ながら見受けられない。
技術者を数多く育てるには、食いやすくなければいけないのだが、Drupal技術者の育成には時間がかかるので、小規模な企業が拡大を模索するのは困難だ。学生時代や転職活動の過程でスキルをつけてもらえるのが望ましいが、受け口となるような大企業が存在しない。政府の支援を受けて、コワーキングのGalvanizeモデルが展開できたら、ブレークスルーとなるのではないかと考えたりする。
僭越なのは重々承知しているが、良い道を探って、皆が幸せになれる形を作りたいと思っている。