バーチャルオフィスで従来のオフィスと類似の体験ができるようにするという考え方は適切か?

コロナ禍で強制テレワークが起こり、関連してバーチャルオフィスがビジネス分野でも注目されるようになった。その一環としてメタバースをバーチャルオフィスプラットホームの一つと見る向きもある。しかし、私はその方向へのオフィスの進化には懐疑的だ。

なぜなら、リモートワーク時代は社内・社外という境界より目的を共有するチームという境界の方が意味を持つと思うからだ。

リモートワーク時代は、仕事を仕上げるという目的を共有するチームメンバーが、物理的にどこにいるかとか、どの会社に属しているかより、目的の達成にどれだけ貢献できるか、そのメンバーの参加によりコストがどう変わるのかの方が重要になる。構造的にはオンラインゲームと同じである。競争力のあるチームが組めれば勝率は上がる。

もちろん、会社の内部でチームを組むということを前提にし、社内の別プロジェクトにも一定の透明性を与えようとするなら、バーチャルオフィスは従来オフィスに近い体験を拡張した形にするのが好ましいだろう。働き手にとっても想像がしやすいと思う。

しかし、物理的にどこにいるのかが問題とならなくなると最適解は大きく変わる。発想を根底的に変える必要があると思う。

現在、完全リモートでの新人育成のお手伝いをしているが、考えれば考えるほどゴールイメージの共有、成長イメージの共有・同意の重要性に思い当たる。従業員ビギナーからすると、認められたい、良い処遇を得たいと考えるのは当然なのだが、どうすればその望みが叶うのかは容易には想像できない。オフィスに集まっていた時は、周囲を見て先輩社員のやり方を学ぶことができたのだが、リモートでは同じことはできない。バーチャルオフィスでも多分多くは期待できないだろう。一方、コミュニケーションコストが高くなれば、準備の重要性が増し、文書化能力とか定義力、企画力、計画力は磨きやすくなる。その際、重要なのはビジネスのゴールイメージの共有であり、成長イメージ、上司が期待する成長イメージと従業員が夢見る成長イメージの相互理解と合意が不可欠だ。今までは、対面である種なあなあでやってきたことを業務の一環として取り組み、文書化することが有効になる。時代は変わりつつあるのだと思う。

やがて、全ての世代、あらゆる場所で新しい形が確立して行くだろう。コロナ後は元に戻るというのは幻想で、新しい時代を迎えつつあると捉えるのが合理的だと思っている。

政治家や官僚もよく考えて欲しい。経営者も教育者もよく考えて欲しい。