THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022 "web3 Summer Gathering"をオンライン聴講した。
特にSession 3のweb3時代の社会システムの話はとても興味深かった。既に、投資サービスや保険がweb3の世界で機能し始めている。NFTで画像などのデジタル資産が話題となっているが、日常的な経済活動がweb3上で再構築され、web3ならではの成長がが期待できる段階に入っているのがよく解った。黎明期なので、推進主体はまだ既存の国籍を有する法人である。サービス開発を進めている人がやっているのは、社会システムの再構築で暗号資産とスマートコントラクトをインフラとするから、特定の国の制度に依存しない新しいデジタル世界での法人機能が構築されつつある。もちろん、その向こうに実物経済があるわけで、従来型のビジネスとの接点は必要となるが、金融サービスや情報サービスはもともとバーチャルなものだから、インフラが機能すれば特定の国の制度に縛られないほうが具合が良いものだ。教育や宗教も物理的な拘束はいらないので同じレイヤに属する。今回のカンファレンスでは出てこなかったが、生きるための知識獲得サービスはおそらくweb3と相性が良い。
https://www.cega.fi/のような透明度の高い金融商品が動き始めると、知恵の勝負になり詐欺も横行するだろうが、うまくいく投資者も出てくるだろう。ただ、従来の金融機関のように統制することはできない。適切な監査を受けていることはブランドになり得るので、監査サービスそのものは価値を生むだろう。国の監査力も競争の対象となる。確実に所得格差は拡大するから、社会保障の設計はより重要度を高める。果たして、社会保障をweb3上に構築することは可能なのだろうか。研究テーマとして相当面白いように感じるし、web3なら実装が伴うから、D論即創業を越え、D論即バーチャル国家設立の可能性がある。
日本人のプレゼンテーションもかなりの割合で英語だったのが印象に残った。多くの登壇者の視点は、基本的に国を越えている。web3は統括者を必要としないシステム、むしろ統括者を排除するシステムなので国から見るとかなり厄介な存在と言える。この技術が深堀りされればどんどん国は既得権益を奪われることになる。
Session 4のweb3立国になるための日本の成長戦略の後半、平井卓也氏、長谷部健氏、伊藤穰一氏のパネルは残念だった。日本は社会システムが成熟していてアナログ時代に構築した紙をベースとする大きな社会システムが構築されているので、容易には変化できない。web3はDX(デジタル・トランスフォーメーション)そのものなので、既存の社会システムの上に作るのは難しい。どちらかと言えば、新しいシステムを作ってしまって移行するタイプのメジャー・バージョンアップに相当するので、既存システムが大きければ大きいほど不利になる。逆に言えば、小国、弱小国にチャンスが到来していると言える。
今日のカンファレンスでリスボンの話が出たが、私は一番有利な位置にいるのはウクライナだろうと思っている。DXで先行しているエストニアとウクライナに大きく張るのが日本にとっては有利な道なのだろうと私は考える。web3で新しい国造りをブロックチェーンに希望を感じて海外に出ていった日本の若者たちに託し(金を出し)、新しい社会システムをウクライナでウクライナの人と共同して作ってもらい、それに日本の行政を移行していくのが近道だろう。もちろん、様々な分野でデグレードは起きる。それでも、無理に古いシステムを延命させるよりは50年程度の期間で見れば有利だろう。
web3時代の国の仕事は人が住みたくなるような街を作ることに尽きるような気がする。税額が高くてもそれが相応なQOLにつながるなら問題ない。何とかして、懐古主義的な「安定は希望」という考えは捨て、次の未来に挑戦しなければいけないと思う。