コワーキング関連で、いわゆるメーカースペースをコワーキングスペースとして訪問した回数は少なくない。今回は、コワーキングスペースとしてではなく、メーカースペースであることを強く意識して、DMM.make AKIBAを訪問した。改めて自分が使っているシーンを想像して見たのである。秋葉原は、自由学園の高等科以降に部品の買い出しに頻繁に行ったところでもある。場所的にもスイッチが入りやすいのだが、Fab Studioには昔木工所で親しんでいたボール盤などがあり、それを見たら、昔の記憶が蘇ってきて急にワクワク感が高まった。アマチュア無線の記憶も戻ってきた。恥ずかしながら、むちゃくちゃ不器用なので失敗の記憶ばかりなのだが、決して興味がないわけでなかった自分に気付かされた。
レーザーカッターは、削り出し機でもあるので、アクリル板に字を削ったり絵を削ったりすることもできる。ロゴマークを入れたり、子どもの任意の弁当箱に名前と緊急連絡先メールアドレスなどを入れることもできる。.aiファイルでベクターデータを準備すれば、器用な人でなくてもやりたいことができそうだ。もちろん、こういう工具だって万能ではないから、何度も失敗してだんだん自分のイメージ通りなものができるようになる。失敗品も含めれば、市販の同様なものの100倍程度の金額になる確率も低くない。自分がある程度の能力を持とうと思えば、英会話学校同様自己投資は覚悟しないといけないが、他の設備を含めメーカースペースには私を引きつけるような力があった。
私が、日常生活で、こんなのがあったら良いなと思いながら探せていないものがいくつかある。例えば、バックパックでパンを運ぶ時に潰さないようなケースだ。タッパーのような容器で、クロワッサン1個がぴったり収められるものは見つからない。少し幅や奥行きが大きくて、高さが数ミリ足りないようなものは100円ショップで見つけられたので愛用しているが、幅少し大きいことで、寝かせて入れるとやや無理矢理感があるし、高さがちょっと足りない程度なら味は変わらないが、ちょっと潰れる瞬間の残念感がある。食パン、パン・ド・ミを潰さずに背負うのは極めて難しく、適当な容器が見当たらない。日常生活は繰り返しだから本当に良いものがあったら、100円ショップで100円で買えるもののぴったり版が1万円でも欲しい。5年1,000回使うとしたら、一回10円だから毎日10円であの残念感が無くなるなら欲しい。旅行もそれなりに頻繁にするから、ネームタグは紙や名刺を挟むようなものじゃなくて、削り出しの自分だけのものが手に入るなら嬉しい。まあ、大抵のものは汎用品や代用品でも困りはしないのだが、自分の気に入ったものが自分で作れたら嬉しいだろう。机の周りの整理に資する器具とか、考え始めるとひょっとしたら何とかできるんじゃないかと思うものをいくつか思いつく。フリーアドレス型のオフィスの快適性を高めるものが作れれば、ヒットが狙えるかも知れない。
メーカースペースで電子機器やロボットなどを作るスタートアップもある。基板設計をやって中国などに発注し、受け取ったものの品質を確認するための機器が備わっていたり、ジャンク品もある。メーカースペースに通っていれば、そのコミュニティ接点から学びが得られるだろうし、あったら良いなという夢に至る道が描けるようになるチャンスもある。設備があるというだけの問題ではなく、そこで何かをやっている人の近くにいることには価値がある。会社の繋がりには会社の繋がりの良さがあるが、コワーキングの強みもある。会社という縛りがない場所だと、オープンソースの強みも発揮させやすいし、社会問題の解決に取り組みやすい。
一方で、コスト(プラン)から見ると、一定の覚悟が必要になる。
Fab Studioが利用できるのは、フリーアドレスのBasePlus会員(月額38,500円最低3ヶ月、入会金22,000円)かドロップイン(6時間5,500円)となる。コミュニティに入るという観点で見れば、既に有名人であるか、最低1ヶ月程度継続的に通う必要があるだろう。ざっくり言って、初期投資でBasePlus契約を行った上、材料代や機器使用料、講習参加費など3ヶ月の期間、総計30万円程度を使う覚悟をすべきだと思う。それがメーカースペース初級クリアのハードルと考えれば良いだろう。現時点の通常の仕事のワークロードを工夫しながら、何とか工夫して1日2時間程度の時間を自己投資にあてることにして、3ヶ月60日分120時間でどの程度まで到達しようかといったイメージを固めてから着手すれば良いだろう。多分、ケチらずに予算をきっちり使い切るぐらいの気持ちで挑戦した方が得られるものは多いと思う。
多少の収入増が見込めるセミプロレベルへの昇格には1年位はかかるだろうから、さらに50万程度の費用は見込まないといけない。コミュニティでの良い関係が築ければ営業活動は可能になるはず。粗利2割が確保できそうなら、スキマ時間を活用しつつ300万程度の売上が見込める方策を考えれば良いことになる。そのステップが越えられたら、次の展開が見えてくるだろうし、ホビーと割り切ったり、その世界から足を洗うという選択肢もある。DMM.makeのプランだと、オンサイト頻度は低いがコミュニティに参加し続けやすいプログラムがないのはちょっと気になった。私の場合は、それが離脱の原因となる可能性がある。長く関わりやすいコワーキングスペースを見つけるのはやさしくない。
62歳の挑戦として考えるのは悪くない気がする。ちょっと人と違う能力が持てるようになれるなら生涯現役の可能性も高まる。他にも本格挑戦ターゲットの候補はいくつもあるから、とりあえずこの分野で3ヶ月挑戦してみる気持ちになれるかどうか、考えてみることにする。
良い体験となった。蛇足だが、将来展望も重要だけど、足元の仕事ももうちょっと厚くしないいけない。食っていくのは楽じゃないなあ。