現金・CBDC・暗号資産

hagi に投稿

受け取りはもちろん、支払いで現金を用いることは殆ど無くなった。今でも、現金しか受け取らない店はあるので、月に1〜2万円はATMでおろした現金を使う。2年ほど前までは、VISAカードを使うことが多かったが、Debitカードの方が条件が良いのと、ほぼリアルタイムで利用内容が確認できるのでクレジットカードの利用量も減った。スーパーでScan&Goなどのアプリを使えば、明細まで細かく管理できるから紙のレシートもいらなくなる。まだAmazonはクレジットカードを使っているけれど、この先どうなるかはわからない。いずれにしてもデジタル化、リアルタイム化の恩恵は大きい。日銀が発行するデジタルマネー(CBDC)が発行された時には今の普通預金のように使うことになるのかもしれない。

ここ数年で銀行送金の手数料も安くなり、私が利用する程度の頻度では3メガバンク、ゆうちょ銀行への送金ではほぼ手数料はかからない。店で使う分には、Debitカードならキャッシュバックがあるから現金より安くなる。個人間の受け渡しは、Paypalで十分。米国居住時に作ったドル口座、e-residencyで作ったユーロ口座があり、それぞれDebitカードがあるので、渡航時も特に困らない。つまり、物理的な紙幣や貨幣はどうしてもそれじゃいけない場合を除けば決済手段として使う気がしないしそれなりの代替手段は持っていると感じているのである。CBDCは民間の電子マネーには勝てない可能性が高いと思う。それでもDXは避けられないから、中央銀行が全国民に口座を用意しCBDCを発行しないわけにはいかないだろう。好まれないものでもいずれ対応しなければいけない。

今後数年もすれば、自分の金融資産(貯蓄)は日本円資産、ドル資産、ユーロ資産、暗号資産に適当と思われる比率で分散保有することになる予感がする。円だけを保有するリスクは大きすぎる。Debitカード等も含め、ウォレットも複数持って利便性や条件でどんな時にどれを使うかを選ぶようになるだろう。スマホの時代がいつまで続くかはわからないが、しばらくは、バックアップも兼ねスマホ複数台携帯が続き、いずれかが機能しなくてもなんとかなるように設定している。物理的なカードの持ち歩きもさらに減るだろう。デジタルネイティブ世代はもっとスマートに生きていくはずだ。

Ethereumの現在のガス代の高さはとても残念だが、やがてメインの決済手段は暗号資産に移っていく可能性が高いと思っている。

CBDCの基本原則は

1.通貨・金融の安定を損なわない
2.公的・民間マネーとの共存・補完
3.イノベーションと効率性の促進

とされているが、何か無理ゲーに見える。デジタル化が進むと流動性は上がるだろうから、統合は一層進むだろう。適格性のあるCBDCはドルとユーロあるいは元を含めた3通貨に集約されるのではないだろうか。そして20年〜30年程度で暗号資産の淘汰も進んで安定感が増し、取引量がCBDCを逆転するのではないかと想像する。それでも、規制対象となる取引はCBDCまたは既存の通貨建てが強制されることになるだろう。恐らくやがて規制はNFTベース(NFTの伴わない規制対象製品・サービスの取引が違法になり、ウォレットTokenに結びつけて取引者単位で管理するよう)になるのではないかと思う。当面はCBDC建てだろうが国債もNFT化するだろう。

通貨の統合の成功例であるユーロの紙幣が流通し始めたのが2002年で20年後の今は当たり前の通貨になっている。日本は衰退期に入っているので、もしCBDCをやるとしたら、早い時期にユーロと統合してしまった方が良いのではないかと思う。そうでなかったとしても、CBDCは円でない方が良い(デノミ新円でも良い)。紙幣は有効期限を定めて新通貨に転換することでタンス預金が一掃できる。同時に銀行口座の残高もトークンに切り替えれば良い。以降はトレーサブルになり、ウォレットの所有者情報のプライバシーが守られることが重要になる。本当に必要な時に個人が特定できるが、政府・行政も容易にプライバシーに踏み込めない仕組みが必要になるだろう。eIDの国際標準化、プライバシールールの国際標準化が重要になる。現時点は、EUを手本にするのが最も合理的に見える。住民基本台帳を基盤としたマイナンバーの失敗は急いで正されるべきなのは間違いないから、欧州のeIDとの共通利用を想定して制度を組み直すのが適当だと思う。覇権指向の強いアメリカに追随すべきではないと私は思う。IBANもウォレット化するだろう。よほどうまくやれなければ、やがてSWIFTは終わる。概ね、欧州発の標準規格は筋が良い。対等を前提とした合意形成の訓練が進んでいるからだろう。

ちなみに、CBDCの国家主権が1国で守れるのは、せいぜい上位3カ国から5カ国で日本がその中に残れる可能性は極めて低い。外国為替決済高(関連wikipedia)ではドルが圧倒的だが、5割に達しているわけではない。ユーロがドルを超える日が来たら、世界は変わるだろう。その結果国連も変わり、拒否権は存在しなくなる可能性が高い。そこまで行くと、安全保障の枠組みも変わる。

今回のウクライナ戦争で、安全保障の概念は変わる。暗号資産が制裁の抜け道になる側面もあれば、被害者支援のツールにもなることが分かっている。国の単位で制裁をするような時代はやがて終わると期待している。DXは世界を変えるのだ。高齢者がついていけないから遅らせるといった判断は適切ではない。変化に対応する以外の道はない。

政策決定に関わっているわけではないから、この記事は単なるたわい言に過ぎないが、何となく次の10年の流れが見えるような気がするのである。まあ、世界中で保守派は強いから、簡単には変わらないけれど、10年の単位で見れば結構世の中は変わるのだ。歴史を逆方向に動かして破綻したのがプーチン。歴史から正当性を言い募る政治家や宗教家には注意を払わないといけない。保守派が幅を利かす(頭が固い)と標準化が歪むので、結果的に孤立してしまう。考え方が柔軟な若い人が頑張っている国や地域は格好良い。戦後の日本もきっとそういう勢いがあったのだろう。世界に受け入れられるように自らが変わる以外の選択肢はなかったのだ。ウクライナを見ていると、彼らはきっと欧州の先達よりもっと欧州の模範になるような人たちになっていきそうな感じがする。そして、彼らは世界のDX推進に大きく貢献するだろう。エストニアがそうであるように。