新型コロナが現実的な脅威と感じられるようになってから半年。様々な対策が取られるようになったし、他国と比較するとかなり感染防止に成功している方だと思う。ただ、自分たちのコロナ対策が正しい、今の行動を続けていれば大丈夫と考えるのは危険だ。
当たり前のことだが、例えば飲食店で対策を全く取っていなくても、そこに感染者がいなければ決して感染することはない。そして、累積陽性者は約7万5千人で、人口の0.06%、1,600人に1人程度である。実際には、ほとんどの日本人はそもそも感染者にすれ違ってもいない。陽性者7.5万人が5日間、感染力を持ったとすると37.5万人日、1億2千万人の半年間は216億人日、その比率をとると、0.002%以下。平均をとったとしても5万分の1以下で、それなりの接触リスクがある接し方をした人が1日100人いたとしても、やっぱり5万分の1以下。180日、ずっと100人と濃厚接触してもまだ0.3%程度。つまり、医療関係者とか特別な環境にある人を除くと、ほとんど誰も新型コロナウィルスに暴露していないのである。ということは、自分の今の対策が感染を防いでいると思いこむのは明らかに間違っている。ちなみにニューヨークで同じ計算をすると14%程度になる。7人に1人程度は、過去半年に暴露してしまっていたことになる。日本は3,000人に一人程度しかいない。つまり、一度感染爆発が起きれば、同レベルの注意をしていたって感染してしまうと考えるほうがずっと現実の数値の動きに近い。
そういう意味で、8割おじさんは合理的だったと考えるべきだ。100人接していた人が20人にしか接しなくなると、5日間の感染期間の間に接する人数が500人から100人になることになる。5日間の延べ数だから、常時接点のある人が10人だとすると、460人から60人に減ることになるので、接触感染者は5分の1ではなく8分の1に減る。当たり前だが、接点がなければ感染確率はゼロだ。頑張って早い時期に接点を減らせたので、感染爆発を押さえられたと考えるのが適当だろう。逆に言えば、接触削減以外の感染対策がどれだけ効いているのかは眉唾で考えたほうが良いとも言える。決して、マスクやアクリル板等が効かないとは思わないが、感染者がそこにいないから感染していないと考えるほうが理にかなっている。これで大丈夫なわけがないだろうというシーンは例えば高校生の登校時の行動など日常的に頻繁に見る。多くの人は、これまで大丈夫だったし、昨年よりはずっと慎重な行動をとっているので今後も多分大丈夫という思い込みがあるのだろう。高齢者も緩んで、接点は明らかに増えている。
ひょっとするとその対策は自分が良く接触する10人の一人に感染者が入れば一発アウトなものかも知れない。つまり、この程度やっていれば大丈夫だろうという考えには根拠がない。今アメリカでは、大学の街で秋学期の開始とともに感染拡大が深刻化している。恐らく寮生活が一番の原因ではないかと思う。寮に限らず、学生は5人から10人程度の仲良しグループでは、かなり接点が濃い。そして、複数のグループに属する人がいる。どこかで、一人入ってしまえば、もう止まらないのである。はっきり言って、接点を減らさない限り止まるわけがないのだ。アメリカの大学の例ではないが、子どもたちの間で感染者が増えて、祖父母の一人が無症状感染者になったりしたら、致命率が8.7%だったとしても、祖父母の友人を無意識の内に追い詰めていることになる。特に高齢者は、対策に気を使うべきだが、むしろ本当に必要な接触以外は避けるのが望ましい。
改めて考え直せば、元のように戻したいと思うのではなく、接点を十分に減らす社会をめざし、本当に必要とする人的接点を見極めることが重要なのだと思う。