もう永らく言い尽くされて来た話題だが、COVID-19は改めて紙媒体の終わりをつきつけている。ついに印鑑を捨てろと迫り、契約「書」という紙を捨てろと主張する。私は、電子署名への移行は不可避だと考えているが、今提案されている多くの電子署名ソリューションはまがい物だと思っていて、長期持続性は感じない。一番のポイントは、リアルな社会の真似をデジタルでやろうとしているところにある。移行するなら、もう一度署名の本質を見直さなければ駄目だ。
一方で、紙媒体はリアルだから、そこに置いてあれば存在に気づく。Webを含むデジタル空間では、一度その情報を離れれば、よほどのことがない限り時間が経過してから再びその情報に接することはない。デジタル情報はそのままでは存在が希薄で、決してリアルな存在に勝てない。
私は、ほとんど本を買わなくなったが、今でも海外に飛ぶ時は、旅行ガイドは地球の歩き方をほぼ間違いなく買うし、もう新しいものは期待できないが、TRANSITは保存したりしている。今の若者には理解できない行動かもしれない。編集者や執筆者の思いに接する機会は、その人を知らなくても想像力を掻き立てる。自分の頭で考える意思が活性化されるのである。
同時に、紙媒体は極めて制約が厳しい。サーチもできないし、紙面の大きさで情報量の上限が決まってしまう。伝えたいことを網羅するには「続きはWebで」と言わざるを得ない。
リアル接点の価値は必ず高騰する。しかし、スイートスポットは従来より遥かに狭くなるだろう。見つけられる自信はないが、そのスイートスポットを探りたいと思う(礼拝の姿は変わる)。