フードデリバリーはNFT化したらどうなるだろうか

今は、コロナ禍でレストラン予約に縁がない生活を行っているが、レストランの予約は非代替性トークン化(NFT化)できる。Wikipediaの解説に従うと「容易に複製可能なアイテムを一意なアイテムとして関連づけられる」からだ。つまり、予約票は容易に複製できるけれど、NFT化すると予約票の所有者=権利者を証明できるということだ。ちなみに英語版のWikipediaでは「NFT ledgers claim to provide a public certificate of authenticity or proof of ownership」対象そのものではなく、行使権や所有権を証明できるという書き方になっていて、日本語の解説より本質に迫っている感じがする。

レストラン予約の特定の時間の特定の席の利用権は代替性がない。その権利を売買することは可能だ。もちろん、時間がすぎれば価値はゼロになる。予約権自身に高い値段をつけることはできないが、景色の良いペア席食事代10,000円込みにしたNFTにすると現実的になってくる。デートの席を相手の了解を取る前に確保してから、申し込むケースもあるだろうし、合意の上で予約した後に喧嘩別れしてしまうケースもあるだろう。NFTは売買可能とすると、同じ席を5,000円で売りに出せば買い手が現れるかも知れないし、逆にそのNFTに対する10万円のオファーが来たら、そのカップルはオファーを受けて売却して、2人で旅行に行く判断をするかも知れない。

PKIが機能していれば、予約票に双方の署名を入れることができ、複製困難なアイテムにすることはできるが、その予約票は流動性がない。一方、NFT化した予約票は上例のように譲渡可能になる。買い手からすると譲渡可能な権利の方がリスクが小さい。レストランは、来客がそのNFTの所有者であることを提示させれば良い。

フードデリバリーの商流をNFTで実現しようと思うと登場人物がざっと4名必要となる。レストラン、配送者、消費者、フードデリバリー会社だ。

どの程度の少額で採算に乗るかが気になるところだが、ランチボックスの予約は、ある日のある時間に当該ランチを受け取れる権利としてレストランがNFT化しても良い。レストラン自身にIT能力がなくても、フードデリバリー会社がNFTの生成サービスを提供すれば良い。フードデリバリーは大雑把に言えば、ランチボックスの準備とお店から消費者への配送サービスのセットである。配送要件と達成時の報酬がセットになったNFTを配送者(Uber Eatsのドライバー等)が買って、消費者の受領証NFTを買い取って、セットでフードデリバリー会社に買い取ってもらえば良い。もちろん、配送者はランチボックスを受け取った時に受領証NFTをレストランに売ることになるだろう。概ね今のフードデリバリーのビジネスモデルに基づいてNFT化の流れを書いたが、良いモデルを作れば、フードデリバリー会社という仲介者は不要になる可能性がある。スマートコントラクトの潜在破壊力は凄まじい。

国際金融のトリレンマの自由な資本移動(暗号資産の許容)、(暗号資産に関する)固定相場制、独立した金融政策が同時に成立しないとすると、自国通貨の信用が残っている間は変動相場制を取っていれば暗号資産の利用を許容できる。グローバル化と同じく技術的には暗号資産の許容は避けられない。変動相場制になるのは当然だとしても、やがて金融政策も立てられなくなるだろう。現在はビットコインで87兆円、Ethereumで37兆円、日本の一般会計が100兆円、アップルの時価総額が300兆円程度。まだまだ暗号資産は存在感として2軍にも入れないが、既に小国の総資産を上回る価値を有している。もし、暗号資産が自国通貨より信頼できると考える人が多くなれば、自国通貨の売りが売りを呼び、紙くずになるだろう。既に、ロシアの人の中には資産を外貨に変えている人もいる。売れる内に流動性の高い暗号資産に変えるという選択はリスクはもちろん小さくないが選択肢の一つとしては合理性がある。

まあ、やがてそういう日は来るだろう。もちろん、日本にも来る。その時に生き残るのが何なのかは分からない。EthereumがNFT/スマートコントラクトで一歩先んじているように見えるが、これから何が起きるかは分からない。その効力はゲームやメタバースの世界に留まるものではなく、フードデリバリーのような実体を伴う経済活動にも必ず及んでくる。